フランスの皇帝、ナポレオンにはふたりの妻がいました。しかし、ナポレオンの妻として有名なのはひとり目の妻、ジョセフィーヌ。
上司であったポール・バラスの愛人であったジョセフィーヌに恋こがれ、婚約者がいたにもかかわらず、ナポレオンはジョセフィーヌと結婚しました。
しかし、ジョセフィーヌはあまりこの結婚に乗り気ではなかったよう。実はナポレオンよりも六つも年上のジョゼフィーヌ。ふたりの恋はどのようにはじまったのでしょう。付き合う男たちを出世させた不思議な力を持ったジョセフィーヌの人生について調べてみました。

恋多き奔放な半生

ジョセフィーヌはマルチニーク島の没落貴族の末裔として1763年に生まれます。貴族とは名ばかりの貧しい家庭でしたが、エキゾチックな美貌で人目を引きました。1779 年にアレクサンドル・ド・ボルネア子爵と結婚し、長男ウジェーヌ、長女オルタンスに恵まれます。しかし、夫婦仲は最悪で4年で離婚します。この時の夫は一時は国民会議の議長まで出世しますが、のちにギロチンにかけられました。
それからジョセフィーヌはふたりの子供のため、生活のためにポール・バラスの愛人になり、持ち前の朗らかさで社交界の花形になります。バラスはこの時フランス政府の舵取りをする「総裁政府」の5人の総裁のうちのひとりになるという出世を果たします。しかしジョセフィーヌに飽きたバラスは部下であったナポレオンに押し付けました。ジョセフィーヌと別れたバラスは政権がナポレオンになったことでフランスを追放されます。
ナポレオンがジョセフィーヌと出会ったころ、実はナポレオンには婚約者がいました。ちょっと田舎っぽくて鈍臭い男だったという逸話もあるナポレオン。社交界の花形で、恋の百戦錬磨のジョセフィーヌに夢中になるのもわかるような気がしますね。
1796年にナポレオン26歳、ジョセフィーヌ32歳のとき、ふたりは結婚しました。
ナポレオンがジョセフィーヌに熱烈なラブレターをたくさん送ったという話は有名ですが、イタリア遠征中のナポレオンのラブレターをジョセフィーヌは友人に見せて笑うなどしていました。戦地見舞いを誘うナポレオンの願いもすげなく断り、ナポレオンがエジプト遠征中にハンサムな騎兵大尉のイッポリト・シャルルと浮気をしているという有様。
その浮気を嘆いたナポレオンのラブレターを乗せたフランス艦がイギリス艦隊に拿捕され、ラブレターの内容が新聞に公表されて国中の笑い者になるという事件がありました。
さすがのナポレオンも、それで恋に浮かされていた熱が冷めました。しかし、恋とは不思議なもので、ジョセフィーヌの方はナポレオンの気持ちが遠ざかるのとは逆にナポレオンを愛するようになります。結局1810年、ジョセフィーヌに子供ができないことを理由にふたりは離婚します。
しかし、ナポレオンが熱烈なラブレターをジョセフィーヌに送っていたころは連戦連勝で、1804年にはナポレオンはついにフランス皇帝の座につきました。
「勝利の女神」として戦場の兵士たちの人気者だったジョセフィーヌ。彼女と別れたナポレオンには徐々に暗雲がたちこめます。戦争に負け始め、皇帝を退位し、最後はセント・ヘレナ島へ流刑となります。
離婚後のジョセフィーヌは失意に暮れていましたが、ナポレオンのいい相談相手となり、その関係は終生続いたといいます。

自然を愛した側面も

マルチニーク島という自然に囲まれた環境で育ったジョセフィーヌは、植物が好きでした。それも派手で恋多きジョセフィーヌらしく、華やかな薔薇が好きでした。ナポレオンの妻だったころにも敵国から珍しい薔薇の種を取り寄せるほどでした。
ジョセフィーヌの部屋には鳥が放たれ、植物で覆い尽くされたといいます。彼女の本質は、マルチニーク島にいたころの、奔放で純粋な少女だったのかもしれませんね。
彼女はナポレオンと離婚後もマルメゾン城で植物の栽培と研究をし、世界中から珍しい薔薇を集めました。薔薇園は大変繁栄し、世界最高峰の薔薇園を作りました。現在、3000種を超えるといわれる薔薇の品種の礎を築いたのは実はジョセフィーヌなのです。
自然を好んだジョセフィーヌのジュエリーに、麦の穂をあらわしたティアラがあります。ティアラを乗せて動くと、ダイヤの麦の穂も揺れるという凝った作りですが、作ったのはフランスの宝飾店ショーメです。
ショーメはもともとはナポレオン御用達のジュエラーでした。店の前でナポレオンの乗った馬車の馬が暴れ、その暴れ馬をなだめたのがショーメの創設者ニトで、それがナポレオンとの馴れ初めです。
やがてショーメはジョセフィーヌの公式ジュエラーにもなりますが、ジョセフィーヌの自然に基づく卓越した美的感覚が、現在もショーメのインスピレーションの源になっているとのことです。ルーブルにある有名なジョセフィーヌの戴冠式の絵に描かれているティアラもショーメのものです。だからというわけではないでしょうけれども、現在でも各王室のティアラ製作の宝飾店で名を馳せています。

自然の力を借りて前に進む

男性の運気をあげる力を持つ女性だったというジョセフィーヌ。恋多き女性が最後に見つけたのは、男女を超えた本当の愛の関係でした。結婚という男女の関係から離れた方が、より純粋に人を愛することができるのかもしれません。
彼女の芯にあったのは、奔放なマルチニーク島の自然だったのでしょう。その自然の力が男たちの運気をあげたのかもしれませんね。
迷いが生じた時は、自然の力を借りる。これ、結構間違ってないと思うのです。
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