日々何気なく目にしているジュエリーやアクセサリー。その中には、実は“誰もが知っている”宝石の正体が「シリカ」であるものがたくさんあります。シリカとは二酸化ケイ素のことで、アメシストやシトリン、オパールやメノウなど、私たちの生活に密接に関わる天然石の主成分でもあるのです。
しかし、「シリカ」と聞いてもピンとこない方も多いかもしれません。この天然成分がどんな構造を持ち、どうして美しい色や形を生み出すのか、その背景を知ると、宝石の見え方が少し変わってくるかもしれません。
この記事では、そんなシリカ・グループ・ストーンの特性や、結晶・非晶質・潜晶質という3つの分類ごとの魅力をわかりやすく解説していきます。身近な天然石の奥深い世界を、少しだけ覗いてみませんか?
- シリカ・グループ・ストーンとは何か
- 結晶系のシリカ(例:アメシスト・シトリン)の特性
- 非晶質系のシリカ(例:オパール)の魅力と構造
- 潜晶質系のシリカ(例:メノウ・カルセドニー)の特徴
- 日常にあふれる天然石との関係性
シリカ・グループ・ストーンの特性
シリカとは二酸化ケイ素(SiO2)のことです。この二酸化ケイ素で造られている宝石や準宝石は、私達が慣れ親しんだ名前が多いです。アメシスト(紫水晶)やシトリン(黄水晶)、オパール、メノウ(瑪瑙)、カルセドニー(玉髄)などです。
シリカ・グループ・ストーンについて、下図の三層特性(本質特性、固有特性、表面特性)を見ながら少し掘り下げて行きます。
二酸化ケイ素で造られている宝石、準宝石は大きく3種類に分けられます。
それは結晶と非晶質、潜晶質です。
結晶とは、例えばシリカを構成する二酸化ケイ素、ケイ素(Si)と酸素(O)という2つの元素が規則正しく並んでいる場合を言います。
ケイ素と酸素が規則正しく並ぶと、外形がきれいな平面になります。シリカの結晶の例として水晶が挙げられます。

シリカは二酸化ケイ素で構成される鉱物
結晶系の特性
中学や高校のときに無色透明な水晶の結晶を見られた方も多いと思います。地球が生み出す美しい結晶に驚かれた方も多いと思います。
宝石市場で見られるシリカの結晶例はアメシストやシトリンです。結晶の多くは透明になります。多くのアメシストは紫色の透明な石です。多くのシトリンは黄色の透明な石です。カット(切断、研磨)されたこれらの石を側面から観察すると、紫色と無色、あるいは黄色と無色の二色が見られます。これは二色性と呼ばれています。
アメシストやシトリンの二色性は弱いですので、肉眼または10倍のルーペで観察しても、容易に見られないかもしれません。二色性を観察する携帯器具(小指サイズの小型器具)として「二色鏡(ダイクロスコープ)」が販売されています。この器具を使うと、弱い二色性の石でも観察可能です。
宝石名 | 色の特徴 | 光学特性 | 二色性の観察 | 使用器具 |
---|---|---|---|---|
アメシスト | 紫色の透明石 | 弱い二色性 | 肉眼では見えにくい | ダイクロスコープで観察可能 |
シトリン | 黄色の透明石 | 弱い二色性 | 肉眼では見えにくい | ダイクロスコープで観察可能 |
規則的構造が美しい透明感に
非晶質系の特性
次に非晶質とは、非結晶とも呼ばれ、結晶と反対に位置する用語です。シリカを構成するケイ素(Si)と酸素(O)が不規則に分布している場合を言います。外形は平らな面を持ちません。塊状で産出します。半透明の場合が多いです。シリカの非晶質の例としてオパールが挙げられます。
オパールという名前を聞けば、多くの人は虹色の外観を思い浮かべます。世界の中で日本人が最も好む宝石のひとつと言われています。オパールは、それほど、日本人の好みに合うようです。オパールの魅力とは何でしょうか? それは宝石用語(専門用語)で遊色(プレイ・オブ・カラー)効果と呼ばれている現象を持っているからです。
オパールを肉眼またはルーペで詳しく観察すると、ある個所と別な個所では色が違って見えます。ある個所では青色、別な個所では緑色、さらに他の個所ではオレンジ色、紫色など多彩です。この虹色のように見える現象を遊色と言います。
オパールの内部の構造を電子顕微鏡で観察すると、丸い球状の小さな小さな粒が集合している状態が見られます。10倍のルーペや光学顕微鏡では、この小さな粒を見ることはできません。この小さな粒は非晶質です。従って、この小さな粒で構成されているオパールも非晶質となります。
すべてのオパールが遊色効果を示すわけではありません。遊色効果を示さないオパールもあります。遊色効果を示すオパールはプレシャス・オパールと呼ばれています。遊色効果を示さないオパールはコモン・オパールと呼ばれています。両者の違いの原因は、粒の大きさ、粒の整列度合いなどによるものと推測されます。
オパールの種類 | 遊色効果 | 粒の特徴 | 備考 |
---|---|---|---|
プレシャス・オパール | あり | 粒の整列度や大きさが適度 | 虹色効果が見られ、人気が高い |
コモン・オパール | なし | 粒が不揃いまたは整列度が低い | 遊色効果は見られない |
オパールの遊色は粒構造から
潜晶質系の特性
そして潜晶質とは、結晶が潜んでいると言う意味です。結晶であることには間違いないのですが、その結晶の大きさが大変小さく、10倍のルーペでは観察できない大きさです。光学顕微鏡では観察できるほどの大きさです。この小さな粒で光が散乱されて、半透明になると思われます。潜晶質の小さな粒とオパールの小さな粒を比較してみると、オパールの粒はかなり小さいです。
シリカの潜晶質の例は、メノウと玉ずいが挙げられます。メノウの英語表記はアゲートで、玉ずいはカルセドニーです。
メノウの一般的な外観は縞模様です。白色と黒色の縞模様を示すときは、オニキスと呼ばれています。褐赤色と白色の縞模様を示すときはサードオニキス(サードニクス)と呼ばれています。
玉ずいについて、市場では玉ずいという呼び名よりもカルセドニーという表現が多いです。カルセドニーは外観の色によって異なる名前が付けられています。
黄橙色から橙赤色の玉ずいはカーネリアンと呼ばれています。褐赤色はサードと呼ばれています。その他、淡い青色の玉ずいはブルー・カルセドニー、暗黄色の玉ずいはイエロー・カルセドニーと呼ばれています。
玉ずいの中で最も高い価格の石は、緑色のクリソプレーズです。この石の外観は一見すると、ヒスイのように見えます。半透明のきれいな石です。この緑色の発色はニッケル化合物に原因していると考えられています。
細かい結晶が作る半透明の世界
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まとめ
シリカは、地球の表面を構成するうえで欠かせない成分でありながら、私たちの身近なアクセサリーや装飾品にも広く使われている素材です。その形態によって結晶・非晶質・潜晶質という異なる表情を見せるシリカ・グループ・ストーンは、それぞれが独自の美しさと特徴を持っています。
アメシストやシトリンのように結晶の整った透明感を持つ石、オパールのように遊色効果を楽しめる非晶質の石、そしてメノウやカルセドニーのように控えめながら奥行きのある色合いを持つ潜晶質の石。それぞれに違った魅力があり、知ることでより一層愛着がわいてきます。
特別なものではなく、私たちの足元や日常にすでに存在しているこの天然石たち。その背景を知ることは、宝石との新たな付き合い方への第一歩となるかもしれません。
- シリカは二酸化ケイ素で構成される鉱物
- シリカ系の天然石は結晶・非晶質・潜晶質に分類される
- 結晶系は透明感と二色性が魅力(例:アメシスト)
- 非晶質系は遊色効果を持つものも(例:オパール)
- 潜晶質系は微細な結晶が生み出す柔らかな色彩が特長(例:メノウ)
- シリカは身近で多様な天然石の素材として親しまれている