【ジルコンは天然石】キュービック・ジルコニアは「人造石」
ジルコンは少し誤解を受けている宝石です。今、宝石市場あるいはアクセサリー市場にキュービック・ジルコニア(称:略ジルコニア)があふれています。このジルコニアは多くの人に知られています。
しかし、ジルコンという名前はあまり知られていません。ジルコンはジルコニアの別名ではございません!
ジルコンとジルコニアはまったく別の石です。ジルコンは天然石です。一方のジルコニアは人造石です。キュービックジルコニアは「人の手によって造り出された石」です。ジルコンは宝石の中でも比較的古くから使用されて来ました。1700年代にスリランカで発見されたカラーレス(無色)のジルコンがヨーロッパに持ち込まれました。
他方、ジルコニアは数十年前にロシアで開発に成功し、ダイヤモンドに外観が似ていることから、その後、多くの国で生産されるようになりました。比較的安い価格で、中国や他の国でたくさん生産されています。キュービックジルコニアをダイヤモンドのように販売しているネットショップを多くみかけ困惑しますが、ジルコニアをジルコンと称して販売されているネットショップは完全な間違いです。くれぐれも注意が必要です。
ジルコンの三層特性図
ジルコンについて、現在でもブルー・ジルコンやカラーレス・ジルコンは市場で根強い人気があります。宝石としてのジルコンの特長は輝きにあります。そして宝石の中では低価格に位置しています。
ここで、ジルコンとは何か? ジルコンの本質特性及び全体特性に迫るには、三層特性図が便利です。下図はジルコンの三層特性図です。まず、ジルコンの本質を知るには本質特性の中の成分をながめることが重要です。
ジルコンはジルコニウムという元素を含むことが大きな特徴です。
次に固有特性を見ると、高屈折率という項目があります。高屈折率は宝石の輝きに直結しています。
ジルコンをラウンド・ブリリアント・カットに研磨すると、ダイヤモンドのような輝きが得られます。この輝きがジルコンの魅力のひとつです。そしてジルコンの魅力は天然石であることです。
2つのタイプが存在するジルコンの謎
ジルコンについて、宝石学者を悩ましていたことがあります。それは、多くのジルコンの特性(比重、屈折率など)を調べていたところ、2種類に分けられることが判明したのです。通常、宝石の比重や屈折率などはひとつの定まった数値を示します。しかし、ジルコンはある石ではひとつの数値を示し、他の石では違った数値を示すのです。
ジルコンは不思議な現象を示し、多くの宝石学者を悩ましました。2種類のジルコンは、それぞれハイタイプ・ジルコンとロータイプ・ジルコンと呼ばれています。三層特性図の表面特性の項目に記載されています。
ハイタイプは比重も屈折率もより大きい数値です。ロータイプはより小さい数値です。
ロータイプの数値が小さいと言っても、石英(クォーツ)の比重や屈折率と比較すると、はるかに大きい数値です。
ジルコンはなぜ2つのタイプが存在するのか? 宝石学者を悩ませて来ましたが、やがて理由が判明しました。三層特性図の本質特性の中に微量のU(ウラニウム)とTh(トリウム)を含むと記載されています。
ジルコンは放射性元素であるウラニウムとトリウムを含むために、数千万年あるいは数億年の間にジルコンの結晶構造が破壊され、非結晶(非晶質)になった、という理由でした。
地球上には、放射性元素の影響を受けてないハイタイプ・ジルコンと放射性元素の影響を受けて結晶が破壊され、非結晶に変化したロータイプ・ジルコンの2種類があります。
このように放射性元素によって、ハイタイプ・ジルコンがロータイプ・ジルコンへ変化する現象は、「メタミクト現象」と呼ばれています。ロータイプ・ジルコンはメタミクト・ジルコンとも呼ばれています。三層特性図の固有特性の中にメタミクト現象という項目が記載されています。
多くのロータイプ・ジルコンは、外観が緑色系であるという特徴があります。スリランカなどで産出した緑色のジルコンは、ほぼロータイプ・ジルコンです。
高い輝きを持つ天然石ジルコン
カットされたジルコン(ルース、裸石)の外観は、高い輝きがひとつの特長です。その他にダブリングの存在が大きな特徴です。ダブリングの存在はジルコンの美しさに寄与しませんが、他の宝
石との識別に大きな役割を果たします。
ジルコンはハイタイプとロータイプの2種類があります。ダブリングはハイタイプのみで観察できます。ロータイプでは観察できません。ロータイプにはダブリングが有りません。
ジルコンとキュービック・ジルコニア(CZ)は似たような響きがあり、ジルコンはCZと同じもの、と誤認されている人も多いです。ジルコンは天然石です。CZは人造石です。CZは人が造ったもので、天然に存在しない石です。
世界の宝石学者や専門業者は、天然石であるジルコンが市場でもっと評価されるべきである、と主張しています。