クリソベリルには3つのタイプがあります。キャッツ・アイとアレキサンドライトとクリソベリルです。キャッツ・アイとは猫目効果を示す石のことです。アレキサンドライトとは変色性を示す石のことです。猫目効果や変色性を示さないクリソベリルを単にクリソベリルと呼んでいます。
キャッツ・アイを発現させるオーバル・カット
キャッツ・アイについて、キャッツ・アイの発現には二つの条件が必要です。ひとつは石の中に一方向に細長い針状またはチューブ状のインクルージョン(内包物)が数多く分布していることです。他のひとつはカットの形状がカボッション・カット(山形)であることです。
これらのふたつの条件を満たすと、細長いインクルージョンの方向に対して直角に白い帯状の線が現れます。この線は「光条(こうじょう)」と呼ばれています。
またインクルージョンが少し曲がっていると、光条も直線的でなく曲がって発現します。
光条が1本の場合はキャッツ・アイ・ストーンになりますが、光条が複数の場合はスター・ストーンとなります。
キャッツ・アイを発現させるには、細長いインクルージョンの分布と共にカボッション・カットが必須です。ルビーなどに見られるファセット(平らな研磨面)・カットを施すと、光条は現れません。全面が白っぽい、灰色っぽい感じになり、平凡な石になってしまいます。
クリソベリル・キャッツ・アイは高価ですから、原石を加工するカッター(研磨工)はできる限り重さ(カラット)を増やそうと試みます。ですから、カボッション・カットの山をより高くします。余り高くしてもデザイン的な美しさを損ないますが、市場には山がかなり高いカボッション・カットの宝石もあります。かなり高い山形は少し違和感もありますが、特異的なデザインとも言えるかもしれません。
宝石を真上から見たときの形状をシェイプと言います。シェイプの基本形は丸形と多角形です。丸形はラウンド(円形)とオーバル(楕円形)があります。
キャッツ・アイ効果を発現させるには、カボッション・カットが必須です。このカットを採用すると、シェイプは必然的に丸形になってしまいます。
流通しているキャッツ・アイのシェイプは圧倒的にオーバルが多いです。原石を保有するオーナーやカッターの立場からすると、重さ(カラット)を増やせるオーバル・カットを選択することになります。
ラウンドのキャッツ・アイが市場に無いという訳ではありません。ときにラウンドもあります。ラウンドを選択する理由は、おそらく小さな割れや目立つインクルージョンの存在でオーバルにできなかった、と推測されます。
アレキサンドライトの原石は大自然が作り出す造形美
アレキサンドライトについて、最大の特長は「変色性」にあります。変色性は「カラー・チェンジ」とも呼ばれています。
光源の種類によって本体の色が変わる現象です。太陽光の下では緑色に見え、白熱電球(例えば、豆球ペンライト)光の下では紫赤色に見えます。アレキサンドライトは極めて珍しい宝石です。
変色性の現象は、クリソベリル本体に微量に含まれているクロム元素に原因しています。
クリソベリルが微量のクロムを含むと、赤色系の光と青色系の光がバランスを保って透過する状態になります。
この状態にあるクリソベリルに青色系が強い太陽光が当たると緑色に発色します。逆に赤色系が強い白熱電球の光が当たると紫赤色に発色します。
市場で見られるアレキサンドライトのカット形状はラウンド(円形)やオーバル(楕円)のミックス・カットが普通です。
ここで、アレキサンドライトの原石に注目すると、実に不思議な形状で産出します。
このアレキサンドライトの原石は、三つの結晶が連結して成長したものです。ですから、「三連双晶」または「三連晶」、「疑似六角晶」などと呼ばれています。大自然が創り出した造形美といえます。
アレキサンドライトの原石はV字を伴う六角形の形状で発見されることは希で、地質学的な年数(数百万年~数千万年)を経る中で風雨にさらされて、ほとんどがペブル(丸い石コロ)状で産出します。
クリソベリルは耐久性に優れ、輝きを放つ魅力ある宝石
キャッツ・アイやアレキサンドライト以外のクリソベリルは単にクリソベリルと呼ばれていますが、透明な緑黄色や黄色、淡緑色のクリソベリルは市場で根強い人気があります。
クリソベリルのルース(裸石)は、通常、クッション・ミックス・カットです。クッションとは四角形の角(隅)をかなり大きく丸くしていることです。ミックスとはクラウン部がダイヤモンドのようにブリリアント・カットで、パビリオン部がステップ・カットのことです。
クリソベリルの中のキャッツ・アイやアレキサンドライトは広く知られています。これらの宝石以外のクリソベリルは単にクリソベリルと呼ばれています。クリソベリルの硬度は8.5という数値で、充分な耐久性を持っています。また、屈折率もルビーやサファイアに近く、輝きもあります。今後、宝石に興味のある方がクリソベリルのことを知れば、もっと購入される機会が増えると推測されます。