ルビーの持つ鮮烈な赤色は、見る者の心を魅了します。ダイヤモンドが輝きの美しさを追求するのに対し、ルビーはその色合いを最大限に生かすことがカットの目的となります。しかし、一口に「カット」と言っても、ルビーにはさまざまな種類があり、それぞれが異なる特徴を持っています。例えば、ルビーの輝きを最大限に引き出す「ステップ・カット」や、神秘的なスター効果を生み出す「カボッション・カット」など、それぞれのカットには適した特徴と理由が存在します。また、ルビーの原石はどのような形状で産出されるのかについてもご紹介します。本記事では、ルビーのカットの種類や特徴について詳しく解説し、ルビーの美しさを最大限に引き出すポイントをお伝えしますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
- ルビーのカットの種類と特徴
- ステップ・カットが持つ魅力とその効果
- スター効果を引き出すカボッション・カットの仕組み
- ルビーの原石の形状とその特性
鮮烈な赤色を活かす「ステップ・カット」
ルビーの魅力は鮮烈な赤色にあります。無色透明なダイヤモンドでは、輝きが最重要です。しかし赤色のルビーでは、自身の赤色をより美しく見せることが最重要です。
右上図はステップ・カットを上から見た図です。右下図は側面から見た図です。階段状のファセット(平らな研磨面のこと)で構成されています。比較的単純な形です。

鮮烈な赤色を持っているルビーなら単純な形でも充分に美しく見えます。このことは赤色ガラスで確かめることができます。赤色ガラスなら低価格でいろいろな形を作成して、美しさの程度を確認することが可能です。
先ず初めに直方体(縦15ミリ×横7ミリ×高さ5ミリ程度)の赤色ガラスを作成しました。研磨された赤色の直方体は、単純な形ですが充分に美しく感じられます。存在感もあります。
次にこの直方体では、日常の使用を想定した場合、角(隅)が欠け易いために少し削る必要があります。さらに少しだけ反射による光の輝きを得るために底面の4方向にファセットを付けました。美しい赤色のイミテーション(模造石)が出来上がりました。
鮮烈な赤色で透明性が高いなら、単純な形、例えば直方体の形でも充分に美しさを引き出すことは可能です。このことは赤色ガラスの作成を通して確認できます。
この直方体を日常使用に耐えるように、さらに少しの光の反射が得られるように考えますと、右上図のようなステップ・カットの形にたどり着きます。
赤色のルビーの色を美しく見せるには、ステップ・カットの形が最も適合すると思われます。多くのカッター(研磨職人)の努力によって、この形に落ち着いたものと推測されます。
次に赤色のルビーをダイヤモンドのような形にカットしたら、どのように見えるのでしょうか? 美しく見えるのでしょうか? ルビーの特長である鮮烈な赤色をうまく引き出せるのでしょうか?
そこで、赤色のガラスでダイヤモンドに一般的に見られるラウンド・ブリリアント・カットの形を作成しました。結果はパビリオン部(ガードルから下の部分)に施されたファセット(平らな研磨面)からの反射光が赤色の美しさを低減させてしまいました。
やはりルビーの赤色を美しく見せるには、ステップ・カットの形が最適です。
カットの種類 | 特徴 | ルビーに適した理由 |
---|---|---|
ステップ・カット | 階段状のファセットを持ち、直線的なデザイン | 鮮烈な赤色を美しく見せ、シンプルな形でも輝く |
ラウンド・ブリリアント・カット | 多くのファセットがあり、輝きを最大化 | 反射光が赤色を低減し、ルビーには不向き |
カボッション・カット | 滑らかなドーム型 | ルビーのスター効果を引き出す |
ルビーの色を引き立てるシンプルな階段状カット
スター効果を生み出す「カボッション・カット」
赤色のルビーに対しては、一般にステップ・カットが適用されます。しかし、特別な場合、ステップ・カットではなく、カボッション・カットと呼ばれる別なカットを適用する必要があります。

カボッション・カットを施すと、すべてのルビーにスター効果が表れるわけではありません。特別な場合だけです。ルビーの中に細くて長い針状の結晶が平行に分布している場合にのみ、カボッション・カットを施せば、スター効果が現れます。
スター効果が現れるには、ルビーの中に細くて長い針状結晶が存在している必要があります。この針状結晶はルチルと呼ばれる鉱物です。スター効果は、髪の毛に現れる「天使の輪」とまったく同じ現象です。
真っ直ぐに整えられた髪の毛をよく見ると、髪の毛の直角方向に1本の白い光の帯が現れています。これが天使の輪です。
ルビーに見られるスター効果は、髪の毛の天使の輪と同じような現象です。
この図の例では、1本の光条ですからキャッツ・アイ効果です。スター効果は合計3方向に光条が見られる場合を言います。ルチルの結晶が3方向に分布していると、3方向に光条が現れます。6本スター効果です。

カボッション・カットの特徴
項目 | 内容 |
---|---|
形状 | 滑らかな丸みを帯びたドーム型 |
スター効果 | 6本の光条が表れる(特定のルビーにのみ発生) |
適用条件 | ルビー内部にルチルの針状結晶が3方向に分布 |
代表例 | スター・ルビー |
ルチル結晶を活かし、光の反射で星を生むカット
ルビーの原石は「六角柱」
百貨店や宝石店のショー・ケースに飾られて鮮やかな赤色を放つルビーは、どのような形の原石から切断、研磨されて造られているのでしょうか?

断面が六角形をしている宝石はルビーの他にサファイア、エメラルド、水晶などがあります。断面は同じ六角形でも、上下の端面の形は宝石の種類によって異なります。ルビーの場合は図のように平らな面ですが、水晶では六角錐のようにとがっています。
ルビーの原石は球体で産出することはありません。平らな面を持って産出します。断面は六角形をして柱状で産出します。なぜ六角形になるかは判りません。多分、ルビーを構成する酸化アルミニウムの配列が、六角形のときにもっとも安定するのだろう、と推測するぐらいしかできません。
地球は人類に鮮烈な赤色のルビーを提供して、私達の目を楽しませてくれています。さらにルビーの原石をながめると、地球が造ったその形に多くの人は驚き、不思議さを感じます。
ルビーは六角柱状で産出し、その形状に特性がある
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まとめ
ルビーの美しさは、その赤色を最大限に生かすカットによって決まります。一般的にはステップ・カットが採用され、シンプルな形でも十分な存在感を放ちます。また、特定の条件下ではカボッション・カットによるスター効果が現れることもあり、これによってルビーはさらに神秘的な魅力を持つ宝石となります。
ルビーの原石は六角柱の形をしており、サファイアや水晶といった他の宝石と共通点を持っています。しかし、その鮮やかな赤色と結晶構造の特性から、ルビーならではの個性が生まれます。
ジュエリーとしてのルビーを選ぶ際には、カットの種類だけでなく、その魅力を最大限に引き出すデザインを意識することが大切です。本記事を参考に、あなたにぴったりのルビージュエリーを見つけてください。
- ルビーの美しさはカットによって決まる
- ステップ・カットは赤色を引き立てるシンプルなカット
- カボッション・カットではスター効果が現れることがある
- ルビーの原石は六角柱状で産出される