トパーズといえば、どんな色や形を思い浮かべますか?
美しい青色のブルー・トパーズを想像する方が多いかもしれません。けれども、トパーズは実に多彩な表情をもった宝石。黄色やピンク、赤や褐色など、色のバリエーションだけでなく、その結晶構造や原石の形状にも、他の宝石にはない魅力が秘められています。
この記事では、トパーズの構造や結晶の特徴、原石の断面の形まで、プロの視点で詳しくご紹介していきます。どうしてブルー・トパーズだけが多様な形で出回っているのか?なぜブルー以外のトパーズは長細いカットが多いのか?割れやすい性質との関係や、原石の断面が持つ意味まで、宝石の奥深い世界にぐっと近づける内容です。
宝石の美しさの裏にある「構造的な理由」を知れば、見る目も深まるはず。トパーズの魅力を見た目だけで終わらせないために、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
- トパーズの色とその由来
- ブルー・トパーズとその他のカットの違い
- トパーズが割れやすい理由
- 原石の断面と結晶構造の関係
Contents
トパーズはブルーだけじゃない
街中の宝石店やアクセサリー店、さらにネット通販では、ブルー・トパーズがたくさん見られます。ブルー・トパーズは美しく、手頃な価格から人気のアイテムです。
天然に産出するブルー・トパーズは、比較的薄い色で希少性が高いものです。現実には濃い色のブルー・トパーズがたくさん販売されています。
不思議なことですが、次のような大発見があったことに原因しています。無色透明なトパーズ(カラーレス・トパーズ)に放射線を照射した後に加熱処理を行うと、ブルー(青色)になる、ということが判ったのです。
カラーレス・トパーズは比較的多くの国(例えば、スリランカなど)で産出します。日本も産出国のひとつに挙げられています。外国の宝石書籍には、トパーズの産出国として「JAPAN(日本)」が記載されています。
最近では、トパーズと言えば、ブルー(青色)を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、ブルー・トパーズが大量に出回る以前は黄色が主流でした。トパーズの日本名(和名)は黄玉(こうぎょく)と呼ばれ、やはり黄色が代表的でした。
トパーズの色は多彩です。黄色、橙色、ピンク色、赤色、淡青色、褐色、そして無色で産出します。多彩なトパーズの中で最も高価な色のトパーズは、インペリアル・トパーズです。赤色味を帯びた橙色から赤色味を帯びた褐色です。シェリー酒の色に近いトパーズが最高の評価です。
色 | 特徴・備考 |
---|---|
黄色 | トパーズの和名「黄玉(こうぎょく)」の由来 |
橙色 | インペリアル・トパーズに多く見られる |
ピンク色 | 一部で産出。希少性あり |
赤色 | 最も高価な部類。赤味が強いほど価値が高い |
淡青色 | 天然ブルー・トパーズに見られるが希少 |
褐色 | 赤味がかった褐色は高く評価される |
無色 | 処理によってブルー・トパーズに変化することが可能 |
多彩な色をもつトパーズはブルー以外も魅力。
ブルー以外のトパーズは、長細いカットが多い
ブルー・トパーズを除いて、カット(切断、研磨)されたトパーズの形をながめると、ある一定の傾向に気付きます。ほとんどの形が細くて長い形、または太くて長い形になっているのです。右の写真は、ブルー(青色)以外の色のカットされたトパーズの形を示しています。
宝石の価格は、同じ種類であれば、大きさ、色、透明性に影響されます。大きさについて、一般論として宝石の価格は大きさの2乗に比例します。
ですから、カッター(宝石研磨工)は原石から出来る限り大きいルース(裸石)に仕上げようと工夫します。
トパーズの原石は長柱状で産出することが多いです。イメージとしては、長い柱のような形状です。長柱状の形から、出来る限り大きいルースにするには、細く長くまたは太く長くカットすることが合理的です。



長柱状の原石に合わせて細長くカットされる。
ブルー・トパーズはどうしていろいろなカタチがあるのか
ブルー・トパーズについて、カットの形は他の色のトパーズと基本的には同じですが、少し背景が異なり、多種多様な形が市販されています。その背景とは、美しいブルー・トパーズが大量に生産されていることです。
カラーレス・トパーズの原石に放射線を照射し、加熱処理するとブルーに改変することが発見され、世界中に大量にブルー・トパーズが出回るようになりました。比較的安い価格で消費者に届くようになりました。
ブルー・トパーズの原石は、インペリアル・トパーズの原石と比較して、はるかに原価は安いと推測されます。ですから、カッターは販売拡張を狙って、多種多様な形のルースに容易に展開できます。このような背景から、ブルー・トパーズでは右の写真のようなラウンド形(円形)も見られます。

ブルー・トパーズの色の濃淡は、放射線を照射する時間でコントロールができます。市中に出回っている色はかなり濃い目が多いです。アクアマリンのブルーと比較すると、ブルー・トパーズのブルーは圧倒的に目立ちます。
ブルー・トパーズはどのような形に仕上げても、色の濃さで存在感があります。小さくても目を引きます。
加工しやすく安価なため多様な形が流通する。
トパーズは実は割れやすい
トパーズは衝撃強さの面で、少し弱点を持っています。その弱点は劈開(へきかい)という性質が強いことです。劈開とは、トパーズなどの結晶において、ある特定の方向に割れ易い性質のことです。
トパーズの原石(右写真)は長柱状の形をしています。その長柱に対して直角方向から衝撃を加えると、比較的割れ易い性質、劈開を持っています。

そこで、カッター(研磨工)はトパーズのルースが劈開を起こさないように原石の切断に工夫をこらしています。
右の描画は、原石の形とルースの切り出しの位置関係を表しています。点線は原石の外形を示しています。赤紫色のルースはステップ・カットの側面を示しています。ルースのテーブル面は長柱面から少しだけ傾けて切り出されます。この工夫によって、テーブル面に偶然に加えられた衝撃の力を逃がすことになります。

トパーズの劈開は、原石を観察するときにしばしば見られます。
長柱状のトパーズ原石の片側端面は、長柱面に直角で、比較的平滑な面をしています。これは劈開によって生じた劈開面です。
特性 | 内容 |
---|---|
劈開性(へきかい) | 特定方向に割れやすい性質あり。特に長柱の横方向に割れやすい |
原石の形状 | 一般に長柱状で産出される |
加工時の配慮 | テーブル面(上面)を原石に対して傾けて切断。衝撃を逃がすための工夫 |
劈開面の観察 | 原石の端面が平滑な場合、劈開によるものと判断されることがある |
劈開の性質により特定方向に割れやすい宝石。
原石の断面はひし形
トパーズの原石は一般に長柱状で産出します。その長柱を真上から観察すると、不思議な形に気付きます。菱形の外形をしているのです。トパーズの断面は菱形です。
初めて見る宝石の原石が何であるかを判定するとき、断面の形状を観察することは重要です。例えば、断面が三角形であれば、トルマリンの原石と判定できます。同様に断面の形が菱形であれば、トパーズの原石と判定できます。
宝石の原石を切り出してルース(裸石)に仕上げるとき、カッターは市場で高価格になるように工夫します。大きさ、色、透明性が価格に大きな影響を及ぼします。
トパーズの原石は一般に長柱状の形です。ですから、インペリアル・トパーズなどにおいては、長方形、長楕円、長いティア・ドロップなどの形に仕上げることが多いです。
トパーズ原石は断面が菱形という特徴がある。
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まとめ
トパーズはその色彩の豊かさだけでなく、結晶構造や原石の形にもユニークな魅力を持っています。ブルー・トパーズが市場に多く出回る背景には、人工的な処理によって安価に供給できるという事情があります。だからこそ、自由なデザインでカットされることが多く、ジュエリーの幅を広げています。
一方で、ブルー以外のトパーズは原石の形を活かすように細長いカットが多く選ばれ、宝石職人の工夫が詰まっています。さらに、トパーズには特定方向に割れやすい「劈開」という性質があるため、研磨時には非常に繊細な調整が求められます。
そして原石を見分けるうえで大きな手がかりになるのが「菱形の断面」。一見すると装飾品としての美しさばかりが注目される宝石も、その成り立ちを知ると一層深く楽しめるもの。トパーズという宝石の背後にある、構造美と職人技の世界にぜひ触れてみてください。
- トパーズには多彩な色があるが、現在はブルーが主流。
- 長柱状の原石形状がカットの形に影響している。
- ブルー・トパーズは大量生産が可能でカットも自由度が高い。
- トパーズは劈開により割れやすいため、加工に配慮が必要。
- 原石の断面は菱形で、宝石判別の手がかりとなる。