バイカラー、それは宝石だけにあらず。洋服や髪の色など、意外にも私達の日常生活にバイカラーという用語は潜んでいます。
今回は美しい宝石に神秘性を付加する、そんなバイカラーの宝石とそれらが生まれる背景について解説していきたいと思います。
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バイカラーにトリカラー!宝石が2つの異なる色を持つ理由とは?
悠久の自然が織りなす技……。一言で言ってしまえばそういうこと!
なぜに宝石の中に数種類の色合いが混在するのか、ここではまずそんな素朴な疑問についてメス入れしていきたいと思います。
バイカラーが生まれる明確な原因は不明
バイカラーとは1つの宝石に2種類の色が見られる現象をいい、3つの色が混在する場合はトリカラー、それ以上の場合はマルチカラーと言いますが、科学的にもその原因ははっきりとわかっていません。
トルマリンが有名ですが、バイカラー、トリカラーにパーティーカラーまたはウォーターメロントルマリンなんていうものもありますね!
通常これらの色の差異は、それらの鉱物に含有している微量元素が複数含まれていることが原因で異なる色合いを見せる、またはその組成が環境の変化によって相違を見せることで複数の色が同時に存在するのではと言われています。
しばし結晶中に見られる帯状の色むらや濃度の違いをカラーゾーニングと言いますが、これはその鉱物が成長する時間に依存しており、いわばその鉱物が生きてきた証のようなもの。
成長の度合いと共にそのカラーゾーニングも変化していきますが、それを引き出すように上手くカットを施すと~カラーの宝石が生まれます。
因みに均一の色を持っていることが宝石の価値を高める要因になりますが、バイカラートルマリンに代表されるような素晴らしい品質のものは非常に高価で取引されることも覚えておきましょう。
加熱処理で人為的に異なる色を作ることも可能!
宝石を加熱処理することで別の色合いに変化させたり、その色合いを強めたりすることも可能です。なおバイカラーの宝石を人為的に作ることも可能で、その場合も加熱処理が行われます。
その例としてはバイカラーのアメジスト、皆さんも聞いたことがあると思いますがアメジストとシトリン両者の色合いを持つアメトリンのことですね。
高貴な紫と飴色が共存できる理由は鉱物種が同じクォーツであり、アメジストに400~500度の熱が加わると橙色に変化するからです。このプロセスは地中つまりは自然の中で行われることもありますが、通常はラボで人為的に処理することでハッキリとしたアメジストとシトリンの相の子を生み出しているのですね。
因みにアメトリンの合成石というものは存在していない、またはラボで作り出されることはほとんどありません。天然のアメジストが多量に産出されているので、そこに加熱処理を加えるだけで簡単にアメトリンが生成可能だからです。
天然アメトリンの場合はその境界があいまいでボンヤリしていること、人為処理の結果できたものはよりキリッとした二色の境界ができることが両者の判別ポイントになります。
なお天然のアメトリンは現在ボリビアでしか産出されず、非常にレアな宝石として知られます。
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こんなにあった!バイカラー宝石の種類まとめ
バイカラーなどを見せる宝石は比較的玄人向けかもしれません。アメトリンなどは比較的流通量が多く、加熱処理で簡単に加工ができる為コスパもいいですが、それ以外のバイカラートリカラーの宝石は非常に高額な値段です。
さてここではトルマリンやアメトリンなどの代表的な鉱物以外の魅力的なバイカラーの宝石をいくつかご紹介していきたいと思います。
タンザナイト
タンザナイトのバイカラーも比較的よく見られます。鉱物種としてはゾイサイトに属し非常に濃いスミレ色を見せる宝石です。ティファニー社によって名づけられ、タンザニアでしか採掘されないレア宝石の一つ。
ゾイサイトは多くのカラーを呈しますが、基本的に青色以外のものはタンザナイト呼ばずにゾイサイトと鑑別されます。タンザナイトのバイカラーは主にブルー、パープル、グリーンでありそのグラデーションは特に女性に人気があります。
なおタンザナイトは見る角度によって目に映る色合いが異なって見える多色性も顕著ということも覚えておきましょう。
サファイア
最近宝飾業界でも特にアツイと呼ばれているのがバイカラーサファイアです。サファイアのバイカラー……、あまり聞いたことがありませんね。しかしカラーダイヤモンド同様にそれは幅広い色合いのファンシーカラーサファイアがあるので、バイカラー、トリカラーがあっても不思議ではありません。
サファイアの場合はホワイト、オレンジ、ブルー、グレーにパープルなどのバイカラーが多いようです。ただしハッキリとした境界がないものも多く、どちらかの色が大部分を占めるイレギュラーさも人気の秘密。
最近はリングなどに好んで加工されているバイカラー宝石として知られています。ただしその分お値段もビックリ価格のものが多いようです。
フローライト
モース硬度が4~5と脆弱ですが、強い蛍光性とパステルカラーの色合いを見せるフローライト。こちらはルース、リングやピアスなどのジュエリー以外にも、カボションにカットしたブレスレットとしても人気です。
フローライトはパープル、ブラック、グリーンなどのストライプ状の帯を見せることが多く、トルマリン同様に多彩なマルチカラーの色合いを覗かせます。これらはしばしレインボーフローライトというフォールスネームで取引されることも少なくありません。
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まとめ
今回はバイカラー、トリカラーなど一粒で二度、三度も美味しい宝石についてご紹介していきました。その原因要素がハッキリわかっていないところが逆に購買欲だとか興味の扉を叩いて止まない要素になりますが、おおよそのところ含有する微量元素の存在、またはその組成変化が原因ではないかと言われています。
カラーゾーイングと呼ばれる単なる軽い色むらレベルなのか、バイカラーと形容していいものなど、その判断は難しいところですがインクルージョンと同様にその宝石の個性を決定づける魅力になるので、ぜひ皆さんもバイカラージュエリーを楽しんでみてはいかがでしょうか?
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