ダブリングとはそもそも何?

ダブリング(Doubling)は、ある宝石について、テーブルから肉眼または10倍のルーペで裏側のファセット(平らな研磨面)のライン(線)を観察したとき、そのラインが二重(Double)に見える現象をいいます。
ダブリングの有無や強さを観察することで、鑑別に有効な情報が得られます。ピンク色のきれいな宝石のダブリングを観察すると、比較的容易にダブリングが見られたら、その宝石はクンツァイトの可能性が高いです。

ダブリングが起こる仕組み

では、ダブリングはなぜ宝石に起こるのでしょうか? それには「宝石に光が当ると、その光は二つに分かれて進む」という原理原則を受け入れておく必要があります。
さらに次の疑問が湧きます。「宝石の中で、なぜ光は二つに分かれるのか?」この点については難しいです。物理の世界です。この疑問に応えられる学者は少ないと思います。
私達は、「光は宝石の中で二つに分かれる」という前提、理解で良いと思います。下図の左側図ように光が宝石に当ると、二つに分かれて進みます。
ところが、例外もあります。ダイヤモンドやガーネットなどは光が二つに分かれません。少し曲がってひとつの光として中を進みます。下図右側図の通りです。

ダブリングという視点での宝石の分類

すべての宝石をダブリングの視点で分類すると、3種類に分けられます。次の通りです。
   (1)強いダブリングを持つ宝石
       スフェーン、ジルコン、ペリドットなど。
   (2)弱いダブリングを持つ宝石
       ルビー、ブルー・サファイア、エメラルド、水晶など。多くの宝石。
   (3)ダブリングを持たない宝石
       ダイヤモンド、ガーネット、オパールなど。
キュービック・ジルコニアやガラスはダブリングを持ちません。
宝石の多くは、「弱いダブリングを持つ」に分類されます。弱いダブリングについて、10倍のルーペで観察することは、なかなか難しいです。石自体が大きいサイズ、または30倍などに倍率を上げると、ダブリングを観察することが可能となります。
ダブリングを観察できるように眼力を養うことは、鑑別力を大きく向上させることにつながります。
ダブリングは、観察している石の方向によって、強い、弱いが変化します。少し石を回して観察することも重要です。

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