絵具として使われた宝石

有名な絵画のひとつに「青いターバンの少女」、別な呼び名として「真珠の耳飾りの少女」が挙げられます。フェルメール(画家、オランダ)の代表的な作品です。
この絵のターバンは、鮮やかな青色です。この青色の絵具は宝石のラピス・ラズリを粉末にしたものであることが判明しています。
この作品は1600年代ですから、その頃にはヨーロッパに既にラピス・ラズリが輸入されていたことになります。

「青いターバンの少女」を契機にラピス・ラズリを深堀して行きます。

ラピス・ラズリの深い青

ラピス・ラズリの主要な生産国は、アフガニスタンとチリです。この絵画に使われているラピス・ラズリはアフガニスタン産と考えられています。
ラピス・ラズリを粉砕して粉状にした絵具は「岩絵の具」と呼ばれています。岩絵の具は、何百年、何千年を経ても変色しない特長があります。ラピス・ラズリを粉砕した粉は、群青(ぐんじょう)色と呼ばれています。群青色は、少し紫色味を帯びた鮮やかな青色を言います。粉砕した粒の大きさによって、群青色はわずかに変化します。
1600年代において、ラピス・ラズリは極めて高価な宝石でした。現在では容易に入手できる比較的安い天然石です。ですから、半貴石に分類されています。(宝石は貴石と半貴石に分けられます。)
宝石のほとんどは鉱物です。ところが、ラピス・ラズリは岩石です。この視点からではラピス・ラズリは珍しい宝石(半貴石)と言えます。

ラピス・ラズリを創り出す鉱物

鉱物の定義は「地殻を構成する最小単位のもの」、岩石の定義は「複数の鉱物で構成されているもの」です。ラピス・ラズリは4つの鉱物からできています。アウイナイト、ソーダライト、ラズライト、ノーゼライトです。
多くのラピス・ラズリには、黄金色をした斑点や白い斑点が見られます。黄金色の斑点は金(ゴールド)ではなく、黄鉄鉱(パイライト)です。白い斑点は方解石(カルサイト)です。
市場では、ラピス・ラズリと共にソーダライトもよく見られる石です。両者の外観は似ています。両者を識別するひとつの目安は、パイライトの存在です。パイライトがあれば、ラピス・ラズリです。ソーダライトにはほぼパイライトがありません。極めて稀にソーダライトもパイライトを含むことがある、との報告もあります。この事実はほとんど無視しても構わないほど希です。

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