ガーネットと言えばザクロ。和名でザクロ石と言いますが、その黒味を帯びたレッドは私たちに深いインプレッションを与えます。

しかしガーネットは赤色発色だけでなく、実は緑色のガーネットもあるのをご存知でしょうか?今回はそんな謎めくグリーンのガーネットの真実にメス入れしていきたいと思います。

グリーンのガーネットって本当にガーネット?

グリーンのガーネットも本物のガーネット!

「えっ!これがガーネットなの?」と驚く方も多い緑色のガーネット。ガーネットには見えないそのビューティーグリーン、ここではあの深紅のガーネットが緑色を発現するその訳について解説していきたいと思います。

深すぎるガーネットグループの発色

ガーネットを一言で説明するのは非常に難しいのです。つまりガーネットはその化学組成の違いにより、様々な本当に色々なカラーを呈することで知られています。

大きくグループ分けをすると、アルミニウム系列(パイラルスパイト)、カルシウム系列(ウグランダイト)に分かれ、更に前者はパイロープ、アルマンダイト、スペサルタイトガーネット、後者はグロシュラライト、アンドラダイト、ウバロバイトガーネットに別れます。

それぞれの鉱物種によってその色合いやモース硬度も異なり、アルミニウム系列のガーネットは紫~赤~黄色までの赤系列の発色を見せます。つまり私たちがガーネットの第一印象で浮かべる深紅のレッドは、アルミニウム系列ということです。(厳密にはパイロープ、アルマンダイトガーネット)

カルシウム系列のガーネットもその化学組成によって呈するカラーは異なりますが、赤色ではなく主に緑~黄色系統。その発色の原因は、クロムやバナジウムが発色の原因と考えられています。

赤色のアルミニウム系列に比べて、緑色のカルシウム系列のガーネットは歴史が浅く、過去には鉱物種の異なる緑色のガーネットを同一視していたこともありますが、現在はそれぞれの化学組成によりしっかり分類分けがされています。

ガーネットは非常にカラーバリエーションが広いということが分かって頂けたと思いますが、唯一ブルー~パープル系の発色は確認されていません。

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2種類ある緑色のガーネット!それぞれの特徴と魅力について

ここでは美しい緑の発色を見せるガーネットの特徴についてお話していきたいと思います。緑系列の宝石の中でも、最近特に人気を集めはじめているので、ぜひその魅力のとりこになって頂ければ幸いです。

グリーンガーネット

グロシュラライトガーネット、この鉱物種の中でも特に美しい緑色をした透明なものを総称してグリーンガーネットと呼びます。このグリーンガーネットは1968年にケニアのツァボ公園から発見されたため、ツァボライトという別名も多用されています。(ちなみにツァボライトというコマーシャルネームには、アメリカの有名ジュエラーが関わっていたそうです。)

このグリーンガーネットは、鉱物種グロッシュラライトガーネットで、付加する元素の違いにより緑色のグリーンガーネット、オレンジのヘソナイト、カラーレスのリューコガーネットなどに区別されています。

このグルッシュラライトガーネットに属するガーネットは、緑~オレンジ、茶色系統の発色を見せ、時としてブラックライト下で光る蛍光性を見せるものもあります。このグリーンガーネットが見せるグリーンはバナジウム添加によるもので、透明度が高い、まるで森林浴をしているかのような錯覚を覚えるほど。

通常の深紅のガーネットに比べても高価で取引されることもあり、ハイジュエリーなどにもよく利用されるガーネットです。

デマントイドガーネット

パワフルなグリーンの発色を誇るのがデマントイドガーネットと呼ばれるガーネットです。19世紀にロシアのウラル山脈から産出されましたが、1920年代には既に枯渇しており、現在流通しているものは主にナミビア、マダガスカル産のものが殆ど。

デマントイドガーネットはアンドラダイトガーネットと呼ばれる鉱物種の一つで、クロムが添加することによって深いグリーンを呈します。その強い緑色だけでも魅力的ですが、特にその煌き(ファイヤー)が強く、まるでダイヤモンド並みの存在感を見せつけてくれます。

デマントイドガーネットには、上記のグリーンガーネットとは異なり、内包物として馬の尾のようなインクルージョンを含むことがあり、これをホーステールと呼んでいます。もちろんデマントイドガーネット全てにホーステールインクルージョンがあるわけではありませんが、ルース愛好家はこのホーステールに強い関心を見せる方が少なくありません。

産出国であったこともあり、ロシアでは19世紀から非常に重宝されてきたガーネットで、ロシアのアンティークジュエリーには多くのデマントイドガーネットが利用されてきました。

あまりグリーンガーネットとデマントイドガーネットを見比べる機会はありませんが、両者似て非なる宝石であることは明白で、一言でグリーンと言っても各々個性が強い発色を見せる唯一無二の美しいガーネットなのです。

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まとめ

今回は緑色のガーネットについて解説していきました。ガーネットと聞くと、ノアの箱舟の舟内をも照らした深紅の赤を連想しますが、実は緑色のガーネットも本家本元の赤同様に人気のある宝石なんです!

グリーンの宝石=エメラルドがまず浮かびがちですが、グリーン系統のガーネットはその希少性から、世界三大貴石エメラルドと同等、またはそれ以上の価格で取引されることもあるレアストーン。

是非ジュエリーに加工された緑色のザクロ石を見かけたら、貴女の宝石箱にあらたにお迎えしてみてはいかがでしょうか?

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