オパールの美しさは比類なきものですが、市場には天然オパールだけでなく、加工されたオパールや合成オパールなど様々な種類が流通しています。「本物のオパールを手に入れたい」と思っても、どのように見分ければよいのでしょうか?

この記事では、宝石のプロフェッショナルが、オパールの種類と特徴、そして天然オパールと加工オパール・合成オパールの見分け方を徹底解説します。購入前の知識として、ぜひ参考にしてください。

この記事で分かること
  • オパールを他の宝石と区別する決定的な特徴「遊色」
  • ダブレットやトリプレットといった加工オパールの見分け方
  • 天然ブラック・オパールと加工品の鑑別方法
  • 合成オパールや模造オパールの特徴と識別ポイント

他の宝石とは決定的に違う「遊色(ゆうしょく)|虹色効果」

オパールを特別な存在にしている最大の特徴は「遊色(ゆうしょく)」です。遊色とは、オパールが示す虹色効果のことで、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫といった色彩が角度によって変化する現象を指します。

オパールをよく観察すると、石の表面に様々な色の領域(パッチ)が存在していることがわかります。これらの色の異なる領域を「斑(ふ)」と呼びます。宝石業界では「斑が良く出ている」という表現で、色彩の鮮やかなオパールを評価します。一般的に、赤色の斑が見られるオパールは特に高価で取引されています。

この独特の遊色現象は他の宝石では見られないため、オパールと他の宝石の見分けは比較的容易です。宝石についての専門知識がなくても、この特徴的な輝きを見れば「これはオパールだ」と識別することができるでしょう。

この章のポイント
オパールの「遊色」は他の宝石にはない特徴。赤色の斑を持つものが最も価値が高い。

難しいのはダブレット、トリプレットという加工石

オパールを鑑別する上で特に注意が必要なのが、「ダブレット」や「トリプレット」と呼ばれる加工オパールの存在です。これらは薄い天然オパールに他の素材を貼り合わせたもので、上面からだけ見ると一見して天然のオパールと区別がつきません。

ダブレットは薄いオパールと別の1つの素材を組み合わせたもので、トリプレットは薄いオパールと2つの異なる素材を組み合わせたものです。これらの加工は、薄く産出されるオパールを日常使用に耐えうる強度にするために行われます。

右図はオパール・ダブレット(上)とオパール・トリプレット(下)の断面図です。ダブレットでは、Aは水晶やガラスなどの透明素材、Bは薄いオパールです。トリプレットでは、Aは同様に透明素材、Bはオパール、Cは不透明な黒色素材(ブラック・カルセドニーやブラック・ガラスなど)です。

オパール・ダブレットの断面図
オパール・トリプレットの断面図

トリプレットの底部に不透明な黒色素材を使用する主な理由は、ホワイト・オパールをより高価なブラック・オパールに見せるためです。半透明のオパールの下に黒色の素材を配置すると、上から見たときに背景が黒く見え、ブラック・オパールの外観に近づきます。

これらの加工オパールを見分けるには、側面からの観察が重要です。貼り合わせた部分は黒い直線として確認できます。ダブレットの場合は1本の直線、トリプレットの場合は2本の直線が見られます。これは、貼り合わせる際に各素材を平らに研磨するため、接合面が直線状になるためです。

種類構造見分け方(側面観察)価格帯(一般的)
天然オパール単一素材接合線なし高価
ダブレットオパール + 1素材1本の黒い直線中程度
トリプレット透明素材 + オパール + 黒色素材2本の黒い直線比較的安価
この章のポイント
ダブレットとトリプレットは天然オパールを薄く使った加工品。側面観察で接合線を確認することが鑑別の鍵。

さらに困難なブラック・オパールの鑑別

ブラック・オパールの鑑別においては、さらに注意が必要です。天然のブラック・オパールでも、稀に直線状の境界を示すことがあるからです。通常、天然ブラック・オパールは上部の虹色を示すオパール部分と下部の天然母岩が一体となっており、両者の境界は波状になっています。

しかし、稀に天然のブラック・オパールでも、オパール部と母岩の境界が直線状になっている場合があります。そのため、単に境界が直線的であるという理由だけで、その石をダブレットやトリプレットと即断することはできません。

このような場合、より詳細な観察が必要です。境界部分を石の全周にわたって観察すると、天然のブラック・オパールでは全周の一部がわずかに凸状または凹状になっていることがあります。このような不規則性を人工的に作り出すことは極めて困難であるため、こうした特徴が見られる場合は天然のブラック・オパールである可能性が高いです。

オパールに加工品が多い理由は、その産出状態に関係しています。オパールは1~2ミリ程度の薄い層で産出することが多く、そのままでは強度が不足し日常使用に耐えられないため、他の素材と組み合わせて補強する必要があるのです。

この章のポイント
天然ブラック・オパールと加工品の区別は難しいが、境界の全周を観察すると不規則性の有無で判断できる。

人工的に作られた合成オパールも存在します

オパール市場には天然石と加工石だけでなく、完全に人工的に作られた合成オパールも流通しています。特にフランスや日本で製造された合成オパールは非常に美しく、アメリカなどの市場で人気を集めています。

合成オパールと天然オパールの鑑別は、10倍のルーペを使った観察で可能です。フランス製の合成オパールには「リザード・スキン(トカゲの皮)」と呼ばれる特徴的な模様があり、表面を注意深く観察すると鱗(うろこ)状の組織が見られます。

一方、日本製の合成オパールには「縦状組織」という特徴があります。天然オパールでは斑(色の領域)が地図の県境のように不規則に分布するのに対し、日本製の合成オパールでは斑が縦方向に整列する傾向があります。この縦状の組織パターンは、特に側面から観察すると確認しやすいです。

さらに、外観のみを似せた模造オパール(プラスチック製やガラス製)も市場に存在します。プラスチック製の模造品は異常に軽く、ガラス製の模造品は肉眼でも人工的な印象を受けます。特にガラス製の模造オパールでは、内部に小さな気泡が見られることが多く、これは天然オパールには見られない特徴です。

種類主な特徴鑑別ポイント(10倍ルーペ観察)
天然オパール自然な遊色、不規則な斑の分布斑が地図の県境のように不規則に分布
フランス製合成オパール美しい遊色、規則的なパターン「リザード・スキン」と呼ばれる鱗状の組織
日本製合成オパール鮮やかな遊色、均一な色分布斑が縦方向に配列する「縦状組織」
プラスチック製模造品人工的な光沢、軽量異常な軽さ、硬度が低い
ガラス製模造品均一な光沢、人工的な印象内部に小さな気泡が見られる
この章のポイント
合成オパールは特有の組織パターンで見分けられる。フランス製は鱗状、日本製は縦状の組織が特徴。

おすすめのオパールジュエリー

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この章のポイント
信頼できるジュエラーで購入することが、品質の高いオパールジュエリーを手に入れる鍵。

まとめ

オパールは独特の遊色効果を持つ宝石ですが、市場には様々な種類の加工品や合成品が流通しています。天然のオパールを見分けるには、側面からの観察が特に重要です。ダブレットやトリプレットは接合線の有無、合成オパールは特徴的な組織パターンによって識別することができます。

ブラック・オパールの鑑別はより複雑ですが、境界の形状や不規則性を注意深く観察することで、天然のものと加工品を区別できる可能性があります。また、プラスチックやガラス製の模造品は、その重量感や内部の気泡の存在によって見分けることができます。

オパールを購入する際は、これらの知識を踏まえた上で、信頼できるジュエラーから購入することが重要です。美しいオパールの輝きを長く楽しむためにも、その真贋を見極める目を養いましょう。

この記事のまとめ
  • オパールの「遊色」は他の宝石にはない独特の特徴で容易に識別できる
  • ダブレットとトリプレットは側面観察で接合線を確認することが鑑別の鍵
  • 天然ブラック・オパールは境界の不規則性で加工品と区別できる
  • 合成オパールはリザード・スキンや縦状組織という特徴的なパターンで識別可能
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