ダイヤモンドはその眩い輝きと永遠の象徴として、多くの人々に愛されています。しかし、ダイヤモンドの本質をご存じでしょうか?実はその正体は、私たちの日常にも存在する「炭素」の結晶です。この炭素が、なぜダイヤモンドという特別な宝石に変わるのでしょうか?

この記事では、ダイヤモンドが持つ驚くべき特性や科学的背景について分かりやすく解説します。ダイヤモンドの成分である炭素の秘密や、永遠の輝きを可能にする構造、さらに火や熱にも耐える理由まで幅広く取り上げます。普段は知ることのないダイヤモンドの内側を、科学の視点で一緒に探ってみましょう。

この記事で分かること
  • ダイヤモンドの正体と成り立ち
  • 永遠の輝きを支える科学的な仕組み
  • ダイヤモンドの特性とその美しさの理由
  • 炭素としての強さと宝石としての価値

ダイヤモンドとは一体何か?!

ダイヤモンドとは何でしょうか? ダイヤモンドはどのようなもので作られているのでしょうか? ダイヤモンドの本質とは何でしょうか?
宝石店のショーケースに飾られたダイヤモンドのペンダント・トップ、指にはめられたダイヤモンドのリング、ダイヤモンドはいつも美しく光り輝いています。この美しいダイヤモンドの本質は何でしょうか?

ダイヤモンドの正体は炭素の結晶

1796年、ダイヤモンドの本質を明かす発表がありました。イギリスのテナント(化学者)は、ダイヤモンドの正体は炭素(元素記号:C)でできていることをつきとめました。
その後、X線解析などの研究でダイヤモンドの本質が明らかになりました。次の二つの特性を持つものがダイヤモンドということになります。
(1)成分:炭素(元素記号はC)
(2)構造:立方晶系

この二つの特性を便宜上、本質特性と呼びます。ダイヤモンドの成分(組成)は単純です。炭素と呼ばれる元素のみで成り立っています。宝石の中でひとつの元素で構成されているものはダイヤモンドだけです。この炭素でできているもの(材料、素材)は身の回りにいくつかあります。鉛筆の芯やスス(煤)も炭素です。しかし、これらの炭素とダイヤモンドの炭素は大きな違いがあります。構造に違いがあります。

ダイヤモンドの中を超高倍率の電子顕微鏡でのぞいたら、ひとつひとつの炭素の原子が規則正しく並んでいることが判ります。規則正しく並んでいる場合を結晶と言います。宝石のほとんどは結晶です。すべての結晶は、原子の並び方のよって7種類に分けられます。立方晶系、正方晶系、六方晶系他などです。ダイヤモンドは立方晶系に属します。
炭素でできているダイヤモンド以外のものは、六方晶系や非結晶(結晶ではないもの)です。

項目内容
成分炭素(元素記号:C)
結晶構造立方晶系(規則正しい原子配列)
発見年1796年、イギリスの化学者テナントが炭素で構成されることを発表
炭素との違い鉛筆の芯や煤とは異なり、規則正しい結晶構造を持つ
その他の結晶例ダイヤモンドは立方晶系、他には正方晶系や六方晶系が存在
この章のポイント
炭素の結晶構造が特別な美しさを生む

炭素の結晶であるがゆえに生まれる「永遠の輝き」

ダイヤモンドの本質特性は、成分が炭素であり、構造が立方晶系であることです。この本質特性から、ダイヤモンドの特長的な次のような特性が生まれます。高屈折率、高硬度、高熱伝導率、特定密度などです。これらの特性は一般に固有特性と呼ばれています。

高屈折率はダイヤモンドに輝きを与えます。高硬度はダイヤモンドに並はずれた耐久性を与えます。高熱伝導率はダイヤモンドと他の類似石との識別に利用されています。特定密度はダイヤモンドであると判定するときに有効です。

さらに固有特性から、私達が実際に目にするダイヤモンドの次のような特性が生まれます。強いブライトネス、強いテリ、シャープなファセット・エッジです。これらの特性を便宜上、表面特性と呼びます。強いブライトネスとは、ダイヤモンドを上から見たとき、白くまぶしく光り輝く現象を言います。ダイヤモンドを美しいと感じさせるもっとも大切な特性です。強いテリとは表面から反射してくる光の量です。このテリも輝きを与えます。ダイヤモンドの場合、通常、テリはブライトネスに邪魔されて判りません。

しかし、ブラック・ダイヤモンドとブラック・スピネルを比較するとよく判ります。テリの差がよく判ります。輝きが違います。

シャープなファセット・エッジとは、宝石を取り扱うプロの業者の方がダイヤモンドを鑑別するときに着目する特性です。ダイアヤモンドは他の類似石と違って、ファセット・エッジがシャープ(鋭い)です。指をそのエッジに当てると、指が切れそうな感覚があります。

特性内容
高屈折率ダイヤモンドの輝きを生む
高硬度並外れた耐久性を実現
高熱伝導率他の類似石との識別に利用
特定密度ダイヤモンドの判定に有効
表面特性強いブライトネス(白い輝き)、強いテリ(反射光)、シャープなファセット・エッジ
この章のポイント
高屈折率と硬度が永遠の輝きを可能にする

ダイヤモンドの特徴・本質特性|固有特性|表面特性

ダイヤモンドの本質はその成分と構造で表すことができます。その成分は炭素です。構造は立方晶系です。この本質特性から固有特性が生まれ、固有特性から私達が目にする表面特性が生まれます。ダイヤモンドの特性は三層に包まれている、と考えることができます。この三層を図示化すると、下の図の通りです。

ダイヤモンドの売買、ビジネスにおいて、高ブライトネスなどの表面特性を見て美しいと感じ、シャープ・エッジなどの表面特性を見てダイヤモンドであると判定しています。

ダイヤモンドを鑑別する場合、多くの宝石店、買取店、鑑別機関では高熱伝導率の固有特性を利用したダイヤモンド・テスター(ある宝石や類似石などの熱伝導性を測定して、ダイヤモンドであるか、ないかを判定する器具)を活用しています。

ダイヤモンドは優れた固有特性を多く持っています。高熱伝導率の他に高屈折率、高硬度などです。この石はダイヤモンドである、と判定、鑑別する場合、固有特性を利用すればよいのですが、簡単ではありません。高熱伝導率を利用したダイヤモンド・テスター以外に商品化された器具は他にありません。ダイヤモンドの高屈折率を市販の屈折計では測定できません。その他の固有特性である高硬度、特定密度などもダイヤモンドの判定、鑑別に簡単に利用できません。

ダイヤモンドであることを証明するもっとも良い方法は、ダイヤモンドの本質特性である「炭素」と「立方晶系」であることを確かめれば良いということになります。しかし、本質特性を明らかにすることは容易ではありません。少々、大がかりな装置が必要となります。X線解析装置が要ります。世界の宝石鑑別機関でこの装置を保有している所は少ないと思います。したがって、ダイヤモンドの本質特性を明らかにして、ダイヤモンドであることを確かめることは極めて少ないと思われます。

最近の科学、技術は多くの人の予想を越えるスピードで発展しています。多くの装置、器具は急速に小型化しています。
近い将来、ダイヤモンドの本質特性である「炭素」と「立方晶系」を検査して、片手で持てるサイズの「ダイヤモンド本質特性検査器具」が開発されるかもしれません。

この章のポイント
三層の特性がダイヤモンドの魅力を作り出す

炭素なのに、火、熱にも強い!!

ダイヤモンドの本質特性は「炭素」と「立方晶系」です。ダイヤモンドの成分は炭素であり、その炭素原子の並びは立方晶系という形をしています。立方晶系に属する結晶は、一般に正八面体や正六面体の形をして天然に産出します。事実、ダイヤモンドは正八面体などの形で原石が産出します。
ここで、ダイヤモンドの成分に注目しますと、成分が炭素であれば燃えるはずです。ダイヤモンドが火事に会えば、燃えるはずです。確かに酸素が充分に供給された場合、ダイヤモンドは燃えます。

しかし、一般の火事では、温度は800度ほどで常に酸素が充分に供給されるとは限りません。ダイヤモンドが火事に会うと、透明なダイヤモンドは白色に変わります。この変わった姿を見て、あきらめてはいけません。表面のみが変色しただけです。表面のみが燃えただけです。再研磨を施せば、ふたたび美しい透明なダイヤモンドに生まれ変わります。

この章のポイント
高温でも耐えうるダイヤモンドの驚異的な特性

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まとめ

ダイヤモンドの本質は、単純な炭素という素材と立方晶系という規則的な構造にあります。この構造が、ダイヤモンドに永遠の輝きや耐久性をもたらし、他の宝石にはない特別な魅力を生み出しています。また、火や熱に対する驚異的な耐性も、この素材と構造の組み合わせによるものです。

この記事を通じて、ダイヤモンドがただの宝石ではなく、「科学の奇跡」であることを感じていただけたのではないでしょうか。ダイヤモンドの魅力を知ることで、その価値や美しさがさらに輝いて見えることでしょう。

この記事のまとめ
  • ダイヤモンドは炭素の結晶で成り立つ宝石
  • 永遠の輝きは高屈折率や高硬度に起因
  • 火や熱にも強い特性がその価値を高める
  • 科学と美が融合した「奇跡の結晶」である
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