ペリドットとは？ペリドットの硬度や本質を【プロが徹底解析】

はじめに

サファイアのように様々な色に変化する宝石がある一方で、ペリドットは一貫して美しいオリーブグリーンを保ち続けます。なぜペリドットは、他の宝石のように多彩なカラーバリエーションを持たないのでしょうか？

その答えは、ペリドットが「自色宝石」であるという、その本質に隠されています。この記事では、宝石の色が決まる仕組みを解き明かしながら、ペリドットがなぜ安定した緑色を呈するのかを徹底解説します。

宝石の成分レシピを示す「三層特性図」を読み解き、ペリドットが「フォルステライト」と「ファイアライト」という2つの鉱物の固溶体であること、そして鑑別の鍵となる「ダブリング」や、日常使いで気をつけたい「硬度」の問題まで、ペリドットのすべてを網羅します。この記事を読めば、あなたもペリドット博士になれること間違いなしです。

なぜ色は変わらない？ペリドットと「自色宝石」の秘密

ルビーの赤、サファイアの青。これらの宝石の色は、本体である無色のコランダムという鉱物に、クロムや鉄といった「不純物」がごく微量に混入することで生まれます。このように、外部から入ってきた不純物によって色づく宝石を「他色宝石（たしょくほうせき）」と呼び、ほとんどの宝石がこれに分類されます。

一方、ペリドットは全く異なる仕組みで色づきます。ペリドットの美しいオリーブグリーンは、不純物ではなく、自分自身の体を構成する必須成分である「鉄（Fe）」によって生み出されています。このように、自らの成分によって発色する宝石を「自色宝石（じしょくほうせき）」と呼びます。ペリドットは、この鉄の含有比率によって黄緑色から緑色、茶緑色へとわずかに色合いを変えるだけで、他の不純物の影響をほとんど受けません。これが、ペリドットの色がサファイアのように大きく変化せず、常に安定したグリーンを保っている理由なのです。

ペリドットの成分レシピを大解剖！

ペリドットという宝石は、鉱物学的には2つの鉱物が混ざり合った「固溶体」です。その2つとは、マグネシウムを主成分とする「フォルステライト（Forsterite）」と、鉄を主成分とする「ファイアライト（Fayalite）」です。宝石品質のペリドットは、この2つが約9：1の割合（フォルステライトが優位）で混じり合っています。大部分はマグネシウム系のフォルステライトですが、色を生み出す上で重要な役割を担っているのは、ごくわずかに含まれる鉄系のファイアライトなのです。

また、ペリドットは「複屈折量が大きい」という顕著な特徴を持っています。これは、石に入った光が2つの光線に分かれる際の屈折率の差が大きいことを意味し、その結果として、ルーペで覗くと稜線が二重に見える「ダブリング」という現象を引き起こします。このダブリングは、ペリドットとガラスなどの類似石を見分ける際の、極めて重要な手がかりとなります。

日常使いでの注意点 – ペリドットの硬度について

ペリドットは美しい宝石ですが、日常的に身に着ける際には少し注意が必要です。その理由は「硬度」にあります。

宝石の硬さはモース硬度という尺度で表されますが、ペリドットの硬度は「6.5」です。一般的に、ジュエリーとして安心して日常使いできる硬さの目安は「7」以上とされています。これは、空気中に舞っているホコリの主成分である石英（クォーツ）の硬度が7であるためです。硬度7に満たない宝石は、知らないうちにホコリと擦れることで、表面に細かなスリ傷がついてしまう可能性があるのです。

ペンダントやイヤリングなど、物にぶつかりにくいアイテムであればそれほど心配はいりませんが、特にリングとして使用する場合は注意が必要です。日常的にずっと身に着けていると、手の動きと共に様々なものと接触し、輝きを損なうスリ傷がつくリスクが高まります。ペリドットのリングは、お出かけの際の特別なジュエリーとして楽しむのが、美しさを長く保つための秘訣です。

まとめ

ペリドットの魅力の核心は、その「安定した美しさ」にあります。多くの宝石が外部からの不純物によって色を変える「他色宝石」であるのに対し、ペリドットは自らの必須成分である鉄によって色づく「自色宝石」。この生まれながらの性質が、一貫したオリーブグリーンの輝きを生み出しています。また、その成分構成はフォルステライトとファイアライトという2つの鉱物の絶妙なブレンドであり、これが大きな複屈折量と特徴的な「ダブリング」現象をもたらします。一方で、硬度がやや低めであるため、日常的な使用には少し配慮が必要です。これらの本質を知ることで、ペリドットとの付き合い方がより豊かになり、その価値を深く理解することができるでしょう。