エメラルドとアクアマリンの原石はどちらも六角柱
緑色のエメラルドと水色のアクアマリンは見た目が違います。外観の色が異なります。しかし、本体は同じです。本体とは宝石自身を形造っている組成(構成しているいろいろな元素の割合)のことです。
エメラルドもアクアマリンも本体は同じベリルと呼ばれるものでできています。不純物を含まないベリルは無色透明です。
無色透明なベリルが不純物としてクロムという元素を微量に含むと、緑色のエメラルドになります。無色透明なベリルが不純物として鉄の元素を微量に含むと、水色のアクアマリンになります。ですから、エメラルドとアクアマリンは兄弟姉妹の関係です。ベリルは親という位置付けになります。
エメラルドとアクアマリンの原石を観察すると、両石とも同じような形をしています。断面が六角で柱状に長く伸びています。色はそれぞれ緑色と水色ですが、外観の形は似ています。どちらも六角柱状です。
平らな面で囲まれた宝石の原石の断面は特別な形をしています。限られた形をしています。
宝石の原石の断面は、三角形、四角形、六角形しかありません。
例えば、トルマリンの原石の断面は三角形です。
ダイヤモンドの原石の断面は四角形です。六角形の断面を持つ宝石の原石は、ここに挙げたエメラルドやアクアマリンです。この他にルビーやブルー・サファイア、水晶などの原石も断面は六角形です。
宝石の原石に見られる美しい形を活かして、原石のままペンダント・トップに用いた宝飾品も流通しています。原石の魅力、自然の魅力を感じている愛好家の方も居られます。
カラーを活かすステップカット
エメラルドもアクアマリンも色に特長があります。鮮烈な緑色のエメラルド、さわやかな涼しさが漂う水色のアクアマリン。
ステップ・カットの形は右図の通りです。右上図はエメラルドをイメージした描画です。右下図はアクアマリンをイメージした描画です。一般に上から見ると、長方形です。そして長方形の4つの角は、日常使用での欠けを防止するために角落としを施しています。
エメラルドやアクアマリンの色の美しさは、平らな板状でも充分に伝わりますが、光の輝きを加えることで一層映えます。このために右図に見られるような階段状のファセット(平らな研磨面)が付加されています。
多くのインクルージョン(内包物、異物)を含み、透明度が落ちるエメラルドやアクアマリンは、このステップ・カットの形状でなく、丸みを持つカボッション・カット(山形)の形状にされます。透明度が落ちるエメラルドやアクアマリンに対しては、トルコ石に見られるような山形のカット・スタイルが適用され、市場にも流通しています。
自然の造形美 トラピチェ・エメラルド
この不思議な形をしたエメラルドは「トラピチェ・エメラルド」と呼ばれています。トラピチェとはスペイン語で歯車という意味です。この写真を見ると、確かに歯車のように思われます。トラピチェ・エメラルドは、写真のような形の他に中心部に小さな六角形が存在しているものなど、いくつかの違った形も発見されています。
私達が住むこの地球は、私達が予期しない珍しい形をした宝石を創り出し、私達を楽しませてくれます。トラピチェ・エメラルドは、美しいという魅力よりも希少性に価値があります。宝石のコレクターにとっては、今まで集めた宝石の中にさらにトラピチェ・エメラルドを加えたい、と願っている方も多いと思います。
ベリル・グループ・ストーンは、ベリルと呼ばれる共通の組成を持っています。無色透明のベリルに微量のクロムが混じると緑色のエメラルドになります。微量の鉄が混じると水色のアクアマリンになります。
ベリル・グループ・ストーンにはこの他に黄色から黄金色のヘリオドール、ピンク色のモルガナイトなどがあります。
ベリル・グループ・ストーンの原石の形状は、いずれも六角柱状です。三角や四角の柱状になることはありません。