さまざまにカットされるグリーンの宝石
ペリドットは外観がエメラルドに似ている緑色系の宝石として古くから使われて来た歴史があります。現代では緑色系の手頃な価格の宝石として人気があります。
ペリドットは世界の各地で産出します。主要な産地はアメリカやミャンマー、ブラジル、中国、オーストラリアなどです。大きさや品質を問わなければ、日本でも産出しています。
流通しているペリドットのシェイプ(上から見た形)はオーバル(楕円形)が主力です。この他にトリリアント(三角形)、ラウンド(円形)、ビーズ(球形)など多様です。
右の写真は上からオーバル、トリリアント、ラウンド、ビーズを示しています。いずれの形状でもペリドットの黄緑色から緑色の特徴を引き出すことができます。
ユーザーにとっても多様な形状に展開されているペリドットは選び易い宝石と言えます。
ペリドットの価値はどこにあるのか
ペリドットを宝石の三条件(美しさ、希少性、硬さ)から眺めますと、美しさにおいては色が最大の特長です。緑色系という点が特長です。しかし、美しさの重要な要因である輝きはダイヤモンドに及びません。ペリドットの屈折率がダイヤモンドの屈折率よりもかなり低いからです。輝きの程度はエメラルドと似ています。
希少性において、ペリドットは世界のいたる所で産出することから、ダイヤモンドやエメラルドと比較して評価は下がります。
硬さにおいて、ペリドットは高硬度の位置付けではありません。モース硬度は6.5です。宝石業界では宝石に必要なモース硬度として7以上を目安にしています。ペリドットはその目安にわずかに及びません。一方、ダイヤモンドのモース硬度は10です。エメラルドのモース硬度は7.5です。いずれも目安を越えています。
ペリドットは宝石の三条件の中の美しさにおいて、きれいな黄緑色から緑色を示すことで市場の評価を得ています。他方、希少性や硬さが低いために市場で手頃な価格になっています。手頃な価格で原石も取り引きされることから、原石に関わるオーナーやラピダリーは多様な形状に挑戦できるとも言えます。
原石もさまざま
エジプトとサウジアラビアの間にある紅海の中のセント・ジョンズ島では、比較的良好な平らな結晶面を持つペリドットが産出することで知られています。宝石愛好家や鉱物コレクターが手に入れたいペリドットの原石です。
ペリドットの結晶成長は温度、圧力、濃度(ペリドットの成分が溶け込んでいる融液の濃度)、時間などに影響されます。
これらの成長因子が一定のレベルを満たすときにペリドットが理想形に成長すると思われます。
宇宙からきたパラサイト・ペリドット
宝石質のペリドットを含む隕石はパラサイト隕石と呼ばれています。この隕石は鉱物、岩石と鉄合金で構成されています。
右の写真(上段)はナゲットと呼ばれている小さな塊のパラサイト隕石です。
ナゲット状のパラサイト隕石は不定形です。そして不透明ですから、内部がどのような状態かを知ることができません。
そこで、パラサイト隕石を薄い厚さのスライスにして、下から光を当てると、内部を観察できます。
右の写真(下段)はスライスにしたパラサイト隕石です。緑色系に見える個所はペリドットです。灰色部分は鉄合金です。パラサイト隕石中に存在するペリドットの形状を観察すると不定形です。
パラサイト隕石の中に存在するペリドット原石を取り出して、カットを施し、「パラサイト・ペリドット(またはパラサイティック・ペリドット)として流通しています。超レア(超希少)宝石と言えます。
流通しているパラサイト・ペリドットの大きさ(重さ)はほとんどが0.5カラット以下です。小さくても超レアなためにかなり高価です。
このパラサイト・ペリドットについて、地球のペリドットと識別ができるのか、という疑問を持たれる方も多いと思います。パラサイト・ペリドット(地球外ペリドット)と地球ペリドットの識別は可能です。
パラサイト・ペリドットの販売に際しては、必ず研究機関の証明書が添付されています。