トルマリンという宝石の名前を耳にしたことはありますか? 鮮やかなブルーが特徴の「パライバ・トルマリン」や、スイカのような色合いを持つ「ウォーター・メロン・トルマリン」など、多彩なバリエーションを持つことで知られています。しかし、その原石の形状に注目したことがある人は少ないかもしれません。トルマリンの原石は、驚くべきことに基本的に「三角形」の断面を持っています。多くの宝石が不規則な形状で産出する中、トルマリンは長く柱状に成長し、断面が三角形を保つという特異な性質を持つのです。これは、鉱物の結晶構造と成長環境が関係しており、トルマリン特有の美しさや価値にも大きく関わっています。本記事では、トルマリンの原石がどのような形状をしているのか、断面の特徴や、美しい宝石へと生まれ変わる過程をイラスト付きで解説します。トルマリンがどのように形成され、なぜ三角形を保つのか、その魅力を徹底解析していきます。
- トルマリンの色のバリエーションと原石の形状
- トルマリンの原石が三角形の断面を持つ理由
- 宝石としてのトルマリンの美しさと加工方法
- トルマライズド・クォーツとは何か
- ウォーター・メロン・トルマリンの不思議な魅力
- 地球が生み出したトルマリンの形成過程
Contents
色は様々でも形は同じ
宝石に興味を持たれている人達の間では、トルマリンはよく知られた石です。特にパライバ・トルマリンという名前は、美しいネオン・ブルーの色を持つトルマリンとして有名です。このパライバ・トルマリンは1987年にブラジルで発見されました。
トルマリンはいろいろな色で産出することが知られています。赤色、ピンク色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色と多彩です。宝石として人気の高いトルマリンの色は、鮮青色のパライバ・トルマリンが筆頭です。次は赤色、ピンク色です。
トルマリンは多彩な色で産出しますが、原石の形は共通しています。不思議な形で産出します。宝石が好きな方でも、宝石の原石を見る機会は比較的少ないと思われます。
トルマリンは自然の中で柱状に長く伸びます。真っ直ぐ長く成長します。
トルマリンの色 | 特徴 |
---|---|
パライバ・トルマリン(青色) | ネオンブルーの輝きが特徴的 |
ルベライト(赤色) | 深みのある赤色が美しい |
ピンクトルマリン | 柔らかいピンク色で人気 |
グリーントルマリン | 緑の濃淡が多様でバリエーション豊か |
ウォーター・メロン | 中心が赤、周囲が緑の二重構造 |
トルマリンは多彩な色を持つが形は柱状
断面が三角形の柱状原石
柱状に長く伸びたトルマリンの原石について、その原石の断面を見ると、興味深い形をしています。右の写真は母岩(宝石の原石を囲む鉱物、岩石)と共に産出したパライバ・トルマリンの原石を示しています。柱状に長く伸びた鮮やかな青色をした原石です。周囲の白色部は母岩です。
このパライバ・トルマリンの断面を見ますと、多角形をしています。六角形をしています。そして長く柱状に伸びています。

トルマリンの原石の断面は基本的に三角形です。
この他に六角状三角形、曲線状三角形をして産出します。これらの断面形状を右下図に図形化しています。
トルマリンの原石は三角形が基本ですから、原石の判定は容易です。三角形をした原石はトルマリンです。

原石の断面形状 | 特徴 |
---|---|
三角形 | 最も基本的な形状 |
六角状三角形 | 三角形が発達し六角形に近い |
曲線状三角形 | 自然の影響で曲線的に変形 |
トルマリンの原石は基本的に三角形の断面
トルマリンの美しさ
トルマリンの原石をカット(切断、研磨)して宝石に仕上げる場合、重さ(カラット)に重点におくと、一般にエメラルドに見られるようなエメラルド・カット(別名、ステップ・カット)が施されます。同時にエメラルド・カットは色の美しさを最大に引き出します。
トルマリンの原石はなぜ三角形を示すのか、その理由は明確でありません。トルマリンを構成するいくつかの元素が、成長する際に三角形になると最も安定するからと推測されます。
基本形である三角形から六角状三角形、そして曲線状三角形に変化するのは、成長する時の環境(温度、圧力、融液濃度、時間)に影響されるものと思われます。
トルマリンの原石は、三角形の断面を保ちながら、長く長く伸びます。時に1メートル近くまで伸びます。
宝石としての加工で美しさが際立つ
トルマライズド・クォーツ
トルマリンはしばしばクォーツ(石英)と共存して産出します。クォーツの中に三角形の断面をした細長い針状のトルマリンが多数見られます。右の写真は針状の黒色のトルマリンをたくさん内包したクォーツです。
この石はトルマライズド・クォーツまたはトルマリン・クォーツと呼ばれています。
このカットされた石を10倍のルーペで表面を観察すると、ある個所で小さな黒い三角形を見つけることができます。トルマリンの特徴ある三角形が見られます。トルマライズド・クォーツの中に見られるトルマリンの数、方向、大きさは、個々の石によって異なります。同じものはありません。

宝石や鉱物のコレクター(蒐集家)にとって、自身が持っているトルマライズド・クォーツは世界で唯一のもの、世界で同じものは無い、ということで大変貴重です。世界でひとつしかないという考えで、ダイヤモンドよりも価値があると思っておられる方もいます。
宝石の三条件として、美しさ、硬さ、希少性が挙げられます。コレクターにとっては美しさよりも希少性に価値を見い出す方が多いかもしれません。
クォーツ内に針状のトルマリンが共存
不思議な魅力「ウォーター・メロン」
トルマリンは時に不思議な形と色を伴って産出します。中心部が赤色で、周囲が緑色で産出します。
このトルマリンはウォーター・メロンと呼ばれています。日本語ではスイカです。右の画像はこのウォーター・メロンを模式的に表したものです。
このウォーター・メロンの原石を薄板状に切り出し、両面のみを研磨してペンダント・トップやイアリングにされる方もいます。産出した自然のままを活かした使い方です。
中心部の赤色の発色は、マンガン元素に原因しています。周囲の6色の右発色は、クロム元素に原因しています。ウォーター・メロンが地球の内部で成長する過程をたどると、成長する周りの環境が大きく変化したことが推測されます。
当初、マンガン元素を含む環境から、数千年あるいは数万年を経て、クロム元素を含む環境に変化したことが想像されます。

中心が赤、周囲が緑の特殊なトルマリン
地球が創り上げた三角形のトルマリン
トルマリンの原石の断面は基本的に三角形です。特徴的な形をしているので識別が容易です。例えば、赤色のトルマリンであるルベライト、赤色のルビー、赤色のスピネルなどの原石が混在している場合、断面が三角形の原石を取り上げれば、その原石はトルマリンです。ルビーの原石の断面は六角形です。スピネルの原石は八面体(ピラミッドを二つ合わせた形)です。
多くの宝石の原石は特徴ある形をしています。特にトルマリンの原石の断面は三角形という珍しい形です。数十億年の年齢を持つ私達の地球は、千年あるいは万年という長い時間をかけて、三角形の形状をしたトルマリンを創り上げてきました。
長い年月をかけて三角形の原石が形成
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まとめ
トルマリンはその多彩な色だけでなく、独特の原石の形状が特徴的な宝石です。一般的な宝石の原石は不規則な形状を持つことが多いですが、トルマリンは長く柱状に成長し、その断面が三角形を保つというユニークな性質を持っています。これは鉱物の結晶構造や成長環境に由来するものであり、同じトルマリンでも産出環境の違いによって六角状三角形や曲線状三角形など微妙な変化が見られます。
また、トルマリンは単体で産出するだけでなく、クォーツの中に内包される「トルマライズド・クォーツ」としても発見され、コレクターにとっては非常に価値のあるものとなっています。特に「ウォーター・メロン・トルマリン」は、マンガンとクロムの影響によって赤と緑のコントラストを生み出し、そのユニークな色合いが人気を集めています。
地球が長い年月をかけて創り上げたトルマリンの形状は、美しさと希少性を兼ね備え、宝石愛好家や鉱物コレクターにとって特別な存在です。本記事を通じて、トルマリンの魅力や成り立ちについて少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
- トルマリンは多彩な色を持つが、原石は基本的に柱状。
- 断面は三角形が基本であり、識別が容易。
- 加工によってエメラルドカットが施され、色の美しさが際立つ。
- クォーツ内に針状のトルマリンを含む「トルマライズド・クォーツ」が存在する。
- 「ウォーター・メロン・トルマリン」は特異な色合いを持ち、人気が高い。
- 地球の長い時間をかけた自然のプロセスによって形成された宝石。