小さな小さなシリカの結晶でできたアゲートとカルセドニー

アゲートの日本語表記は「めのう(瑪瑙)」です。「めのう」という単語は年配の方に比較的知られていると思います。カルセドニーの日本語表記は「ぎょくずい(玉髄)」です。
この「ぎょくずい」という単語は余り知られていないと思います。現在、宝石の名前の表示はほとんど英語表記になっています。
ですから、以後は「めのう」や「ぎょくずい」もアゲートとカルセドニーと表示します。
アゲートもカルセドニーも本体は同じもので構成されています。本体は潜晶質シリカと呼ばれている組成です。潜晶質とは、肉眼やルーペで検出できないほど小さい結晶の集合体をいいます。シリカとは二酸化ケイ素(SiO2)のことです。

均質なカルセドニーと、不均質なアゲート

アゲートとカルセドニーの本体は同じですが、両者の間には外観の違いがあります。
アゲートは外観が不均質な状態を言います。一方、カルセドニーは外観が均質な状態を言います。両者の違いは外観だけです。不均質か均質かの違いだけです。
アゲートもカルセドニーも小さな結晶の集合体ですから、ほとんどが半透明です。ですから、ファセット(平らな研磨面)に加工されることは少ないです。両者とも市販されているほとんどの商品の形状は、カボッション(山形)・カットやビーズ(球状)です。時折、ステップ・カットも見られます。

さまざまな模様を見せるアゲートの魅力

アゲートは外観が不均質です。ですから、さまざまな模様が見られます。ここではこの模様を形状とみなして話を進めます。アゲートはいろいろな模様(形状)で産出しますので、個々に名前が付けられています。次の通りです。

(1)オニキス(オニクス)

黒色の本体に直線状または曲線状の白色あるいは灰色のバンド(帯)が見られます。黒色と白色(灰色)の配色ですから相当に目立ちます。存在感があります。オニキスは比較的安価ですからアクセサリーの材料として人気があります。
オニキスは爪という意味があり、爪の根元には曲線状の半月爪が見られます。オニキスのバンドは半月爪に似ているように思われます。
オニキスは黒色の本体に白色(灰色)のバンドを有していることが基本ですが、最近ではバンドを持たない黒色一色もオニキスと呼ばれています。
本来、黒色一色の潜晶質シリカはブラック・カルセドニーに分類されるはずですが、名称は時代と共に市場のニーズに合うように変化するようです。

(2)サードニクス(サードニキス、サードオニキス)

黄橙色や黄赤色、褐赤色を基調として白色のバンドを持つ潜晶質シリカはサードニクスと呼ばれています。
年配の一般消費者がイメージしている「めのう」はサードニクスが多いです。
右の写真(写真出所:GIA)のようにバンド構造を示していることから、大自然の中で一定期間ごとに組成が変化していることを意味しています。

(3)ブルー・レース・アゲート

淡青色と白色がレース模様を示す潜晶質のシリカはブルー・レース・アゲートと呼ばれています。
この石の細部を観察すると、きわめて複雑な模様であることが判ります。人為的には造り出せない緻密な構造をしています。

(4)デンドリティック・アゲート

デンドリティックとは樹枝状という意味です。右の写真(写真出所:Etsy)を見ると、樹木のようです。しかし、本物の樹木が入っているわけではありません。樹木のように見えるものは、酸化マンガンと推測されている鉱物です。
外観が似ているものとしてモス・アゲートがあります。苔(こけ)のように見えることから、モス・アゲートと呼ばれています。このアゲートも生物の苔が入っているわけではありません。この場合は緑泥石(りょくでいせき)という鉱物と推測されています。

(5)ファイア・アゲート

黒色系の母岩を背景にして赤色やオレンジ色の球状の比較的大きな粒が集合しています。
右の写真(写真出所:geology.com)はファイア・アゲートと呼ばれる種類です。
ファイアの発色は酸化鉄とシリカの薄層構造による光の干渉色と考えられています。
市販されているファイア・アゲートの商品は丸みを帯びた不定形が多いです。

アゲートはさまざまな模様を私達に示してくれます。細部を観察すると、大自然でしか造れない模様(形状)をしています。一方、カルセドニーの外観は均質です。しかし、光に透かして中を観察すると、やはり大自然の緻密さ、複雑さを垣間見ることができます。

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