宝石に色をつけられるって本当?

繊維でつくられた衣類などはいろいろな色に染色されています。しかし、固くて丈夫な宝石を染色することができるのでしょうか? そうです。ほとんどの宝石は染色することはできません。染色できる宝石は限られています。特別な条件が必要です。
話を進める前に「着色」と「染色」の用語を区別しておく必要があります。着色という広い用語の中に「染色」は含まれます。一般に染色は有機物の染料を用いて染めることです。
着色処理は染色処理の他にペインティング(塗装)処理やコーティング(被覆)処理、表面拡散処理などがあります。

染色できる宝石の条件

ここでは比較的容易に着色できるひとつの方法、染色処理を取り上げて解説します。宝石を染色することができる、ということは宝石の表面から内部に通じている隙間(すきま)があることです。
良質のルビーやブルー・サファイアには、表面から内部へ通じる隙間などありません。ですから、染色処理で着色はできません。
現在、流通している染色処理された宝石(貴石および半貴石)には、染色できる理由があるはずです。そうです。染色処理が可能な原則は「表面から内部へ通じる隙間があること」です。このことが必須の条件です。
このような条件を満たす宝石はいくつかのパターン(型)があります。次の模式図の通りです。

粒状構造

粒と粒の間に隙間があります。染料がこの隙間に染み込み、粒を取り囲むように染料が沈殿します。宝石の例では、ヒスイ、メノウ、カルセドニー、エチオピア(エチオピアン)・オパールなどです。

クラック(割れ)

クラック(割れ)が比較的内部まで達している場合です。このクラックがいくつも存在すると、染色によって濃色に仕上げることができます。エメラルドなど。

繊維状のインクルージョン

繊維状のインクルージョンが無数にある場合です。繊維と本体の間、あるいは繊維と繊維の間に隙間が生じると、染色が可能です。虎眼石など。

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