結晶の集合体である潜晶質

宝石や鉱物の書籍を開いて、瑪瑙(メノウ、アゲート)の項目を見ると、必ず「潜晶質」という用語(言葉)が出てきます。
潜晶質という用語を理解することは、アゲート(メノウ)を理解することにつながります。潜は潜(ひそ)むという意味です。潜水艦などの言葉もあります。隠れて目立たないことです。晶は結晶のことです。結晶のイメージとしては、水晶の結晶が最も身近です。各国各地で産出する原石は、六角形をした柱状の形です。結晶は平らな面で囲まれている特徴があります。
潜晶質は結晶が小さく潜んでいる状態のことです。潜晶質の結晶の粒はかなり小さくて、光学顕微鏡で検出できるか、できない程度の大きさです。潜晶質はこの小さな結晶粒が集合したもの(集合体)です。

右図は高倍率の顕微鏡で観察したときの潜晶質のイメージ図です。
潜晶質は英語でクリプト・クリスタリン(Cryptocrystalline)と呼ばれています。クリプトは潜む、隠れるという意味です。

潜晶質とはまた違う微晶質

クリスタリンは結晶という意味です。一方、英語でマイクロ・クリスタリン(Microcrystalline)という用語もあります。
日本語では微晶質(びしょうしつ)と訳されています。
潜晶質と微晶質の違いは、結晶粒の大きさの違いです。潜晶質の粒は微晶質の粒より格段に小さいです。潜晶質の粒は10倍のルーペで観察することはできません。微晶質の粒は10倍のルーペで見えることもあります。

瑪瑙(メノウ)の染色処理

アゲート(メノウ)は潜晶質に属します。10倍のルーペでひとつひとつの結晶の粒を見ることはできません。アゲートは極微細な結晶の粒の集合体です。ですから、この極微細粒で光が散乱され、光の透過度は劣ります。半透明に分類されます。
半透明とは、新聞紙の上に半透明素材を置いて文字を読むことはできません。しかし、下からペンライトを当てると、光は透過する状態をいいます。
潜晶質に属する宝石(貴石と半貴石)は、アゲート(メノウ)の他にカルセドニーがあります。
潜晶質は極微細な粒の集合体ですから、粒と粒の間はわずかですが、隙間が開いていると想像されます。このような状態を利用して、アゲート(メノウ)はしばしば染色処理されます。今、流通しているほとんどのアゲートは染色処理されています。
潜晶質は半透明で染色されやすい特徴があります。他方、靱性(じんせい)があります。
靱性とは粘り強さのことです。ですから、彫刻するときに好都合です。アゲートは縞模様が活かされ、かつ靱性が活かされてカメオ等の彫刻品に利用されています。
補注1:潜晶質は隠微晶質(いんびしょうしつ)とも呼ばれます。
補注2:微晶質(マイクロ・クリスタリン)の例はジャスパー、タイガーズ・アイ(虎眼石)など。

参考英文:Cryptocrystalline cannot be resolved in an optical microscope.
Microcrystalline is visible in an optical microscope.

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