あなたはインタリオという用語を聞いたことがありますか?古代から脈々と受け継がれてきた宝石彫刻技法インタリオ。今回はインタリオとはなんぞや?という普遍的な疑問から、その歴史やジュエリー加工のススメまで、インタリオの魅力を徹底検証していきたいと思います。

カメオに埋もれた宝飾技法インタリオとは?

上品な奥様がシットリとカメオのブローチをしていたら、その上品な趣に思わず心が奪われてしまいます。カメオは付ける女性を選びがちですが、逆にインタリオは女性ならずも男性にもシックリ来るシックな魅力があるのです。

ここではインタリオとカメオの違いを軸に、カメオに存在感を奪われがちなインタリオの装飾性に迫ってみたいと思います。

インタリオとカメオ、両者の違いは一体何?

簡単にインタリオとカメオの違いを説明すると、カメオは素材となる貝や宝石に浮彫で彫刻を掘ったもので、インタリオはその反対!つまり陰彫による彫刻を施されたものをいいます。

つまりカメオのように立体的な像が素材の上に浮かぶのではなく、印章を封蝋に押したり、粘土に押し付けることで、その図像を楽しむのです。

モダンのインタリオジュエリーはカメオに比べて少ないですが、カメオより長い宝飾史を持っていること、そして印章つまりハンコとして機能してきた実用性から、古代から大変重宝されてきました。

日本の印鑑はインタリオの好例として挙げられますが、現代の欧米諸国は印鑑ではなく手書きのサインが当たり前になっているので、残念ながら伝統的な印章としてのインタリオ使用は見かけなくなりました。

なおローマ法王が指に嵌めているかの有名な指輪、「漁夫の指輪」は印章用のインタリオリングとして使用されてきましたが、現代は印鑑としてではなく法王のシンボルとして着用されているようです。この漁夫の指輪、法王が変わるごとに粉々に砕かれてしまうという、可哀想な運命を辿ることになります。

ちなみにインタリオで使われる素材はカメオ以上に幅があり、例を出して挙げてみると……。アゲート、コーネリアン、ジャスパー、ブラッドストーン、カルセドニー、ガーネット、アメジスト、水晶、オニキスにクリスタルなど、様々な素材が使われています。

これらの素材の違いは、特にアンティークの時代測定の際に非常に有益な判断材料になることもあり、特に古い時代のものはデザインだけではなく、使われている素材にも注目です!

インタリオの歴史と現状の彫刻技術

インタリオの定義と雑学をザックリお話ししてきましたが、ここではインタリオが誇る悠久の歴史を紐解きながら、その素晴らしい彫刻技術の遍歴について考察してみたいと思います。

古代ローマ時代から伝わるインタリオの歴史

インタリオの歴史はもはや宝飾史の歴史と言っても間違いではありません。紐解いていくと、古代メソポタミア文明のシリンダーシール(円筒状の表面に様々な図柄を彫刻し印章として使われたもの)まで遡ります。メソポタミア文明って、いつだっけ?という方も少なくないと思うので、補足として説明すると、紀元前2800年~538年まで存在したチグリス、ユーフラテス川近郊で興亡した文明のことです。

特に古代ローマ時代には多くのインタリオが作成され、印章代わりとして利用される他にも、魔術的な意味合いを込めたお守りとしても機能してきました。宝飾品というものは時代を問わず、邪眼から身を守る、または幸運を導く対象として宝石、ジュエリーにすがる人類共通の役割があったのです。現代でいうとそれぞれの宝石における石言葉、誕生石やパワーストーン的な位置付けが、古代のインタリオだったと考えると分かりやすいでしょう。

ちなみに題材としてはギリシャ神話、クレオパトラ、アレキサンダー大王などの実在の人物、スカラベやオウム、虫やイルカなどの動植物など多岐にわたり、それぞれの意味合いを想像しながら楽しむ、それがインタリオの醍醐味の一つと言えます。

ルネサンス以降もインタリオは根強い人気を誇り、18世紀イギリスの上流階級がグランドツアーなる遊学でイタリアを訪れた際には、いわゆるお土産品として、古代ローマ時代の彫刻を模したインタリオが大変な流行をみせました。

古代メソポタミアからギリシャ、ローマ時代、ルネサンスと、それぞれの時代と流行りはその図案、彫刻の仕方、使用される石によって異なりますが、詳細な年代測定は容易ではありません。そのため後世による贋作が古代のインタリオとして販売されたりと、インタリオ市場は常に贋作で溢れかえった歴史もあるのです。

有名なところでは、ポーランドの名門貴族であるポニャトフスキーによる、大量の古代ローマ時代のインタリオ贋作事件は現代にも逸話として伝わっています。(贋作ではありますが、当時から200年程度時間が経過していることもあり、ヴィクトリアン初期の素晴らしいアンティークとしての価値と宝飾史を揺るがす大事件が付加価値として、インタリオの魅力を底上げしているのです。)

現代の宝石彫刻の現状について

時代を遡るにつれ廃れる技術があり、反対に急伸的な技術の発達を見せる者があります。インタリオは19世紀後半のヴィクトリアン期には既に、人気の過度期を過ぎ去り、その人気をカメオに奪われてしまいます。

19世紀には機械による宝石彫刻技術が発達するものの、ジュエリーにおけるインタリオ人気は陰り廃れてしまうのです。印章用のインタリオフォブが多く作成されたイギリス、フランスでも徐々にインタリオが忘れ去られ、現代においてもインタリオ作家というジャンルは一部の地域を除き点在していないのが現状と言えます。

優れた手彫りの技術と、機械彫りの混在テクニックによる現代インタリオは、ドイツ、イタリア、中央アジアの一部地域で、インタリオの彫刻技術が脈々と次世代へと伝えられているのです。

なお高等教育による宝石彫刻も過去のそれに追いついておらず、前述のインタリオ生産が行われている場所での徒弟など、技術伝達の場が非常に限られていることは危惧するべきことなのではないでしょうか?

インタリオをジュエリーに加工してみよう!

インタリオの魅力云々の前に、ジュエリー関係者でもその存在を知らない方も少なくありません。卓上の知識を活字で述べてもなかなか伝わらない、それがジュエリーというものです。

そのためインタリオの本当の美しさを実感するには、実際手に取ってみることが一番ということは言うまでもありません。

アンティークのルースパーツを使用してリングまたは印章に!

アンティークもののインタリオの多くは指輪として加工される場合がほとんどです。特にたっぷりの金を使用した、プックリとしたタイプのリングと相性が良く、また回転式(スイベル式)のリングとして加工される例も多く見られます。

インタリオはある程度の大きさがないと彫刻が施せないため、必然的に指先に存在感を感じさせるリングになるはずです。日本ではインタリオリングを嵌めている男性はあまりいませんが、外国だとさり気なく自分のイニシャル入りのインタリオリングなどを、日常使いしている方は少なくありません。

またリング以外にも大振りのインタリオの場合は、印章としてフォブシールに加工にするのも面白いかもしれません。現代では手紙に封蝋をする風習はありませんが、敢えて封蝋にインタリオを押して、その浮彫として浮かんだ姿を楽しんでみるのも面白いですね!

モダンのインタリオをあなた好みにオーダーメイドも素敵!

現代物のインタリオはアンティークと異なり、手彫りではなく機械彫りのものがほとんどです。細部まで然りと表現された優美性や繊細なラインは目を見張るものがあります。アンティークのルースとは全く違う線と図像ではありますが、それが逆に日常使いしやすいカジュアルさを生むのかもしれませんね!

また、涼し気な自然モチーフやペットなどを裏側から彫り込み彩色したタイプのものを、オーダーメイドするもの面白いかもしれません。(これらをリバースインタリオと呼びます。)

前述の外国以外でも日本のいくつかの工房では、手持ちのルースにインタリオ加工できるところもあるので、宝石の美しさプラスαのオリジナリティーを楽しみたい方にこそ、オーダーメイドインタリオをオススメしたいと思います。

質のいいインタリオはどこで購入するべき?

現代に流通しているインタリオは、どこか涼し気でモダンな洋装にも似合うので素敵です。インタリオに限らず宝石、ジュエリーの美しさは、どこに価値観を置くかによって異なります。

しかし本当に芸術性が高いものは現代のモダンインタリオではなく、明らかに数百年~2000年前に作られたアンティークインタリオに他なりません。ルーペを通して見れば分かるその世界観、まるでパズルを解くかのように妄想してみるモチーフの謎と、粘土に押したときに分かる宝石上の絵画。

古代インタリオがオリジナルリングの形で現代に伝わることは非常に稀ですが、欧米各国のアンティークジュエリーディーラまたはオークションではインタリオをルースの形で購入することができます。

またネットオークションのe bayで、多くのアンティークに似せたまがい物が混在しているので、鑑識眼が備わっていない方は、e bayでの購入は若干リスキーかもしれません。その為イギリスやフランスなどのジュエラーのオンラインストアーで、直接購入することを強くオススメいたします。

ロンドンにはインタリオに強いディーラーも多く、数万円程度でそれなりのインタリオルースを購入することが可能なので、気になる方はGrays Antique CenterのHPなどで各ディーラーと直接コンタクトを取ってみてはいかがでしょうか?

浮彫のカメオと沈み彫のインタリオ!両者の違いを区別してインタリオを堪能しよう

カメオとインタリオ、似たようで異なる両者の違い、ジュエリーに精通している方でも意外と知らない事実に目から鱗といった方も多かったのではないでしょうか。

インタリオの認知度こそカメオに劣りますが、アンティークジュエリーの分野でもインタリオは比較的難易度が高く、通がハマるジャンルと言われています。しかし昨今はモダンものをカジュアルに身に着けたり、アンティークルースを現代風にアレンジしたりと、その楽しみ方は十人十色。

ダイヤに半貴石を一通り楽しんだその後は、ぜひインタリオの深いロマンと悠久の歴史に浸ってみてはいかがでしょうか?

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