暗赤色のアルマンディン・ガーネット

ガーネットという名前は広く知られています。1月の誕生石として多くの人が知っています。ガーネットと言えば、ほとんどの人は少し黒色味を帯びた赤い(暗赤色)石を記憶していることと思います。
ガーネットの色に関して、宝石店やアクセサリー店等でよく見かける暗赤色のガーネットの他に緑色やオレンジ色をしたガーネットも産出します。
このように一口でガーネットと言ってもいくつかの種類があります。それぞれ違った名前がガーネットの前に付いています。古くから知られている暗赤色のガーネットは、アルマンディン・ガーネットと呼ばれています。

出会う機会の多い暗赤色のアルマンディン・ガーネットをどのようにして鑑別するのでしょうか。鑑別とは、目の前にある石がどのような種類か、どのような名前か、天然石か合成石かを判定することです。合成石とは、天然石と同じ組成(元素の割合)を持っているが、人の手によって造られた石を言います。

アルマンディン・ガーネットと外観が似ている石として、暗赤色のガラス、暗赤色の合成ルビーが挙げられます。右の写真の下段左がアルマンディン・ガーネットです。下段右がガラスです。
上段は合成ルビーです。これらの3石について、アルマンディン・ガーネットは天然石です。暗赤色のガラスは模造石です。暗赤色の合成ルビーは合成石です。

鑑別を行うときの基本は、肉眼と10倍ルーペによる観察です。肉眼で石の色、透明性などから、およその石の名称を推測します。しかし、肉眼だけでは確証は得られません。
そこで、10倍のルーペを使用します。この簡単な器具によって得られる情報は格段に増加します。石の名称を確定する有力な情報が得られます。
カット(切断、研磨)されたアルマンディン・ガーネットを正面(テーブル面)から見ると、黒色味を帯びた赤色を示します。この石を側面から観察すると、茶色に見えます。
側面からでは茶色に見えることがアルマンディン・ガーネットの特徴です。

石の内部|内包物を観察する

次に石の内部を10倍のルーペで観察します。細い針のような結晶や小さな塊のような結晶が見られたら、この石は天然石と判断できます。石の内部に見られる針状結晶や塊状結晶は、インクルージョンと呼ばれています。日本語では内包物と言います。石の内部に見られる異物のことです。
アルマンディン・ガーネットに似ている石は暗赤色のガラスと暗赤色の合成ルビーです。
もし、石の内部に針状や塊状のインクルージョンが見られたら、ガラスの模造石でもなく、ルビーの合成石でもありません。天然石の可能性が極めて高く、アルマンディン・ガーネットと判定できます。
暗赤色のガラスについて、正面から見ても側面から見ても暗赤色です。色が濃いガラスは一般に泡(気泡)や脈理(スワール)が見られます。泡も脈理もガラス中の異物ですから、両者もインクルージョンと言えます。

泡の形はほとんどの場合、球状です。ときに楕円状や笹状も見られます。泡の成分は酸素、炭酸ガス、二酸化イオウなどです。右の写真はガラスの中に見られる泡を示しています。大きい泡や小さい泡が数個見られます。
脈理とは、水の中に蜂蜜を少量垂らして、かき混ぜたときに見られるモヤモヤ感のことです。ガラスの中のわずかな組成の違いです。写真の右側に見られる斜めの直線状の筋が脈理です。脈理はこのよう
に直線状になったり、曲線状になることもあります。

泡や脈理の存在はガラスの決定的な証拠となります。泡や脈理を観察することで、ガラスとアルマンディン・ガーネットを識別できます。

合成石をどう見分ける?

暗赤色の合成ルビーについて、側面から観察すると紫味を帯びた赤色と橙色を帯びた赤色が見られます。このような二色の色が見られたら、ルビーと判定できます。さらに10倍のルーペを使ってルビーの内部を観察します。
すると、認識できるような異物は見当たりません。このような状態をルーペ・クリーンと言います。10倍のルーペを使って観察したとき、石の内部がクリーン(きれいな状態、異物が無い状態)であると判定できたら、ルーペ・クリーンです。ある石がルーペ・クリーンなら、ほぼ合成石です。
模造石(例えば、ガラスなど)や合成石(例えば、ルビーなど)に故意にインクルージョン(内包物、異物)を入れることは不可能ではありません。しかし、生産性は極端に落ちます。例えば、針状のルチルの結晶をガラスやルビーの中に故意に入れると、生産工程の途中で破損してしまいます。創意工夫して生産工程を改良しても、容易ではありません。ビジネスとしては成り立ちません。
天然石であるアルマンディン・ガーネットと模造石であるガラス、合成石である合成ルビーを鑑別するには、先ず側面から観察して得られる色から判断します。次に石の内部を10倍のルーペで観察します。針状や塊状の異物が見られたら、アルマンディン・ガーネットと判断します。泡や脈理が見られたら、ガラスと判断します。ルーペ・クリーンなら、合成ルビーと判断します。

肉眼とルーペでは、アルマンディン・ガーネットと判定しにくい場合、決定的な証拠をつかむ方法があります。その方法は携帯できる小指サイズの「分光器」と呼ばれる器具を使うことです。この器具の大きさは直径12ミリ、長さ53ミリです。重さは13グラムです。外観は右の写真の通りです。
この器具の右側から中をのぞくと、分光色が見えます。分光色とは、ガラス・プリズムに光を採り入れたときに見られる赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色のことです。そして、この器具の左側の前にアルマンディン・ガーネットを置いて、右側から中をのぞくと、黄色から緑色の個所に3本の帯状の黒い線が見られます。この3本の帯状の黒い線は、アルマンディン・ガーネットの決定的な証拠となります。

ガラスの模造石や合成ルビーの合成石ではこのパターン(3本の帯状の黒い線)は見られません。
私達が目にするガーネットは、ほとんどがアルマンディン・ガーネットと呼ばれている種類のガーネットです。この種類のガーネットは正面から見ると暗赤色ですが、側面から観察すると、茶色に見えます。この特徴を知っておくと、他の似たような石と識別する場合に便利です。