クリソベリルの3つのタイプを解説

クリソベリルという名前を知らない人も、キャッツ・アイやアレキサンドライトという名前は聞いたことがあると思います。クリソベリルという宝石は次の3タイプに分けられます。

(1)キャッツ・アイ

楕円形の中に1本の白い線が走り、あたかも猫の目のような感じを受けることから、キャッツ・アイと呼ばれています。

右の写真はキャッツ・アイの例です。(写真出所:GIA)
キャッツ・アイ効果を示す宝石は、いくつかの種類かあります。
宝石業界では、キャッツ・アイと言えば、クリソベリル・キャッツ・アイを意味しています。このクリソベリル・キャッツ・アイの本体は、名前の通りクリソベリルと呼ばれる石で構成されています。クリソベリル・キャッツ・アイの色
は蜂蜜色が最高と言われています。

(2)アレキサンドライト

光源を変えて、アレキサンドライトに光を当てると色が変わります。この現象は変色性(カラー・チェンジ効果)と呼ばれています。

右の写真はアレキサンドライトの例です。(写真出所:GIA)
太陽光の下では緑色を示し、ペンライト(豆球)の下では紫赤色を示します。アレキサンドライトの本体はクリソベリルです。クリソベリルの中に微量のクロム元素が含まれると、変色性が生まれます。色が緑色から紫赤色へ、逆に紫赤色から緑色へはっきりと変わるほど評価が高くなります。

(3)クリソベリル

キャッツ・アイやアレキサンドライト以外のクリソベリルは、単にクリソベリルと呼ばれています。色は黄色、緑黄色、緑色、褐色などで産出します。

右の写真はイエロー・クリソベリルの例です。(写真出所:GIA)

キャッツ・アイとアレキサンドライトをプレシャス・クリソベリルと呼ぶなら、この二つの宝石以外のクリソベリルはコモン・クリソベリルになります。宝石愛好家の間では、コモン・クリソベリルは根強い人気があります。淡黄色や黄色のクリソベリルは、18世紀から19世紀にヨーロッパで盛んに宝飾品に使われました。

光条を発現するキャッツ・アイ

クリソベリルの3つのタイプについてさらに掘り下げていきます。先ず、キャッツ・アイについて、宝石商の会話の中でキャッツ・アイと言えば、クリソベリル・キャッツ・アイを意味しています。
キャッツ・アイには表面に1本の白い線、あるいは白い帯が見られます。これは「光条(こうじょう)」と呼ばれています。この光条はなぜ発現するのでしょうか。
光条はクリソベリルの表面そして内部に、1方向に分布するたくさんの細長い針状のインクルージョン(内包物、異物)に原因しています。
この針状のインクルージョンによって光が反射されているからです。さらに光条が現れるには、カボッション(山形)・カットにする必要があります。カボッション・カットを施すことによって、1本の白い線、帯が現れます。
ルビーやエメラルドに見られるファセット・カット(平らな研磨面)にすると、キャッツ・アイや光条は現れません。表面全体が白っぽい感じになるだけです。魅力の無い宝石になってしまいます。

変色性をもつアレキサンドライト

次にアレキサンドライトについて、変色性(カラー・チェンジ)の現象はクリソベリルに含まれる微量のクロム元素に原因しています。
クロム元素によって赤色系の光と青色系の光がバランスを保つようになります。その結果、青色系が強い太陽光をこのクリソベリルに当てると、青色系に近い緑色に発色します。一方、赤色系が強いペンライト(豆球、白熱電球)を当てると、赤色系に近い紫赤色に発色します。
アレキサンドライトの魅力は変色性にあります。ですから、色の変わりが強いほど市場の評価は高いです。
アレキサンドライトにペンライトを当てて変色性を観察する場合、少し注意が必要です。今、ペンライトのほとんどはLEDが占めています。ほとんどのLEDペンライトは青色寄りです。ですから、LEDペンライトを当てて変色性を観察すると、予想外に変色性が弱いことを体験します。
ビジネスで顧客に説明するときは、LEDペンライトを使うことを避けて、豆球ペンライトを使うことが必須です。

実は優れた耐久性と美しい輝きが特徴のコモン・クリソベリル

そして3番目のタイプのクリソベリル(コモン・クリソベリル)について、黄色や緑黄色、緑色の発色は微量に含まれる鉄元素やバナジウム元素と考えられています。
コモン・クリソベリルはキャッツ・アイやアレキサンドライトのような強烈な特長はないですが、高い硬度(モース硬度:8.5)と高い屈折率(1.74~1.75)を持っており、充分な耐久性と輝きを備えています。
ですから、コモン・クリソベリルはもっと多くの人に知られ、使われるのにふさわしい宝石と言えます。
一般の多くの人にとって、「クリソベリル」という名前は馴染みが薄いと思います。しかし、キャッツ・アイとアレキサンドライトが同じもの、同じ組成のクリソベリルで構成されていることを知ると、クリソベリルに少し興味を持たれるかもしれません。

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