美しい虹色が浮かび上がるオパールや、穏やかな色合いが魅力のカルセドニーなど、「シリカ・グループ」と呼ばれる宝石たちは、私たちの身近にありながらも奥深い魅力と鑑別の難しさを併せ持っています。見た目の美しさにうっとりしながらも、本物と見分けるにはプロの視点が欠かせません。
この記事では、シリカ(二酸化ケイ素)を成分に持つ宝石群の分類や、天然石と合成石を見極めるためのポイント、そしてイラストを使った分かりやすい解説を通じて、鑑別のコツを丁寧にお伝えします。
宝石が好きな方や、少し専門的な視点で学びたい方にぴったりの内容です。美しさの裏にある知識を深めて、より宝石の世界を楽しんでみませんか?ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
- シリカ・グループとは何か、その分類
- オパールの鑑別方法(遊色効果・トリプレットとの違い)
- 合成オパールと天然オパールの見分け方
- アメシスト・シトリンとガラスの見分けポイント
- 潜晶質の石(オニキス・カルセドニー)の特徴と鑑別方法
Contents
大きく3種類のシリカ
シリカ・グループとは、シリカ(二酸化ケイ素、SiO2)という組成(成分)を持ついくつかの宝石、準宝石のグループ(集まり)を言います。
具体的な例としてオパール、アメシスト、シトリン、オニキス、ブルー・カルセドニーなどが挙げられます。
このシリカ・グループ・ストーンは大きく3種類に分けられます。次の通りです。
(1)非晶質系:原石の状態は塊状です。外観は透明から半透明です。
(2)結晶系 :原石の状態は六角柱状です。外観は透明です。
(3)潜晶質系:原石の状態は塊状です。外観はほとんど半透明です。
分類 | 原石の状態 | 外観の特徴 | 代表的な宝石 |
---|---|---|---|
非晶質系 | 塊状 | 透明~半透明 | オパール |
結晶系 | 六角柱状 | 透明 | アメシスト、シトリン |
潜晶質系 | 塊状 | ほとんど半透明 | オニキス、ブルー・カルセドニー |
シリカは3種に分類される
表面は美しい虹色のオパールでも側面が重要
非晶質系に属する宝石はオパールです。先ず、このオパールの鑑別から始めます。多くの人にとってオパールといえば、美しい虹色を示す宝石とのイメージがあります。オパールは日本人に人気がある石です。確かに青色や緑色、オレンジ色などの多彩な色がひとつの石の中で同時に見られるオパールは、きれいで魅力的です。
ひとつの石の中に部分的に青色、緑色、オレンジ色などの虹色が見られる現象は遊色効果(プレイ・オブ・カラー効果)と呼ばれています。オパールの最大の魅力はこの遊色効果が見られるところにあります。
遊色効果が見られたら、今、目の前にある石はオパールと判定しても間違いありません。
しかし、オパールを鑑別(観察している石の名前が何であるか、天然石か合成石かなどを判定すること)する場合、注意を要することがあります。
それはオパール・ダブレットとオパール・トリプレットと呼ばれる製品が市場に出ているからです。オパールは薄い層で産出することも多く、例えば厚さ1ミリほどの薄いオパールを活かすために他の素材(ガラス、水晶など)と貼り合わせることがあります。
右図(上図)は、カボッション・カットされたオパール製品を側面から見た図です。山形の部分は無色透明な水晶またはガラスです。薄い板状部分がオパールです。この製品は、二つの素材(水晶またはガラス、そしてオパール)が使われていることから、オパール・ダブレットと呼ばれています。

右図(下図)は、同じくカボッション・カットされたオパール製品を側面から見た図です。山形の部分は無色透明な水晶またはガラスです。下側には薄い板状部分が二層あります。上の層はオパールです。下の層は黒色の素材です。その黒色の素材は一般にブラック・カルセドニーです。この製品は三つの素材が使われていることから、オパール・トリプレットと呼ばれています。

オパールを鑑別するときは、「側面から観察すること」が鉄則です。オパール・ダブレットやオパール・トリプレットを側面から観察すると、接着した面が1本または2本の黒い線として見られます。比較的厚いオパールの原石からカット(切断、研磨)された製品では、側面から観察しても1本または2本の黒い線は見られません。
オパール・トリプレットにおいて、最下部に黒色の素材を貼り合わせる理由は、外観をブラック・オパールに似せるためです。一般に見られる白色系のホワイト・オパールよりもブラック・オパールは高価です。この理由のために最下部に黒色の素材を貼り合わせます。そしてそのオパール・トリプレット製品を上から見ると、黒色を背景にして遊色がより映えることになります。
種類 | 層の構成 | 鑑別のポイント | 見た目の特徴 |
---|---|---|---|
天然オパール | 単層(オパールのみ) | 側面に接着線が見えない | 遊色が自然に広がる |
オパール・ダブレット | オパール+透明素材(水晶やガラス) | 側面に1本の接着線が見える | 上から見ると天然に近い |
オパール・トリプレット | オパール+透明素材+黒色素材(ブラックカルセドニー) | 側面に2本の接着線が見える | 遊色が黒背景でより強調される |
オパール鑑別は側面観察が鍵
きわめて美しい合成オパールを鑑別する
オパールの鑑別において、オパール・ダブレットとオパール・トリプレットを見破ることは重要です。さらに合成オパールが課題になります。天然オパールに対して、現在、フランスや日本で合成オパールが生産されています。これらの合成オパールは美しい虹色、遊色効果を示します。
フランスで造られた合成オパールは虹色の部分を10倍のルーペで拡大すると、鱗(うろこ)状の模様が見られます。この模様は写真では認識しにくいので、描画で示します。
右図の通りです。オパールを肉眼で観察すると、青色や緑色、橙色の領域が見られます。これらの領域は斑(ふ)と呼ばれています。この斑の個所を10倍のルーペで拡大すると、右図の中心部に示したような鱗状の模様が見られることがあります。この鱗状の模様が見られたら、フランス製の合成オパールです。天然ではこのような鱗状の模様は見られません。

日本でも合成オパールがたくさん造られています。このオパールの外観はきわめて美しく、日本でも外国でも人気があります。この日本製の合成オパールは、側面から観察すると、斑が縦状に伸びた形状をしています。この特徴が鑑別の目安になります。
合成か天然か模様で見極める
アメシストやシトリンをガラスと鑑別する
シリカ・グループ・ストーンの結晶系に属する石は、アメシストやシトリンなどが挙げられます。アメシストは日本語表記では紫水晶、シトリンは黄水晶と呼ばれています。
これらの石を鑑別する場合、バイオレット(紫色)・ガラスやイエロー(黄色)・ガラスが課題となります。
アメシストやシトリンを白い壁を背景にして、10倍のルーペで内部を観察すると、薄い部分と濃い部分の色ムラが見られます。その濃淡の境界は直線状です。バイオレット・ガラスやイエロー・ガラスでは見られない特徴です。
色ムラで天然かを判断
比較的身近な石のシリカ・グループ 潜晶質の石
シリカ・グループ・ストーンの潜晶質に属する石は、オニキス、ブルー・カルセドニーなどが挙げられます。オニキスは白色と黒色の縞模様を持っています。このように縞模様を示す石はすべてメノウと呼ばれています。メノウは英語表記ではアゲートです。
ブルー・カルセドニーは半透明、曇り状です。鮮やかでない淡い青色をしています。外観は縞模様が見られず、均質な感じです。このような石はすべて玉ずいと呼ばれています。玉ずいの英語表記はカルセドニーです。
メノウ(瑪瑙)は普通に出会う石です。世界や日本の多くの地域で産出する身近な石です。ですから、価格は比較的安価です。メノウの鑑別は、カボッション・カット(山形形状)、縞模様、半透明がポイントです。
カルセドニーも普通に見られる石です。比較的安価です。カルセドニーの鑑別は、カボッション・カット、均質外観、半透明がポイントです。カルセドニーの場合、名称は外観の色の名前を頭に付けて表示されます。例えば、ブルー(青色)の場合は、ブルー・カルセドニー、イエロー(黄色)の場合は、イエロー・カルセドニーと表示されます。
縞模様や色味で鑑別可能
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まとめ
シリカ・グループに属する宝石たちは、その美しさに魅了されると同時に、鑑別の難しさも伴います。とくにオパールは、遊色効果によって本物に見えても、ダブレットやトリプレットといった人工加工が施された製品が存在するため、側面からの観察が不可欠です。
また、合成オパールは天然のものと見分けがつかないほど美しく、ルーペを用いた細かい観察が必要です。フランス製や日本製の合成オパールにはそれぞれ特徴的な模様があり、そこを見極めることがポイントとなります。
さらにアメシストやシトリンも、色ガラスとの違いを見抜くには濃淡や色ムラの観察が重要です。潜晶質系のメノウやカルセドニーは日常にも身近な存在でありながら、その特徴を知ることで、本物と向き合う楽しさが広がります。ぜひ本記事の内容を参考に、宝石の世界をより楽しんでください。
- シリカ・グループは主に3種(非晶質、結晶系、潜晶質)に分類される
- オパールは遊色効果だけでなく、側面観察でダブレット等を鑑別
- 合成オパールは模様(鱗状や縦状)で見分ける
- アメシスト・シトリンは色ムラの有無でガラスと鑑別可能
- メノウやカルセドニーは縞模様・色の均質性で判断する