トルマリンという宝石をご存じでしょうか?その多彩なカラーバリエーションとユニークな性質から、多くの人々を魅了してきました。特に「パライバ・トルマリン」の鮮やかなブルーや、「バイカラー・トルマリン」の美しい色のグラデーションは、他の宝石にはない魅力を持っています。また、トルマリンは単なる美しい宝石にとどまりません。加熱すると帯電する「焦電気」や、見る角度によって色が変わる「二色性」、光の屈折による「ダブリング」など、科学的にも興味深い特徴を持つ石なのです。本記事では、そんなトルマリンの魅力を深く掘り下げ、その変種や特徴、科学的な性質について詳しく解説します。プロの視点からトルマリンの本質をひも解きながら、その魅力を存分にお伝えします。トルマリンの奥深い世界を一緒に探っていきましょう。
- トルマリンとは何か?和名や基本情報
- 人気のパライバ・トルマリンの特徴
- トルマリンの変種と色のバリエーション
- トルマリン特有の焦電気や二色性、ダブリングの仕組み
- バイカラー・トルマリンの特徴と魅力
パライバ・トルマリン
トルマリンの中で最も人気があるのは、ネオン・ブルーの色を持つパライバ・トルマリンです。
1989年、ブラジルのパライバ州で発見されたことからこの名前が付けられました。鮮やかな青色をしたトルマリンです。
この石の発色は銅に原因していることが判りました。さらにマンガンが鮮やかさに関与していると推測されています。銅の含有率(パライバ・トルマリンの中に含まれている銅の割合)は最大で5.6%、最小で0.5%、平均すると約2%程度含まれていることが判りました。
その後、パライバ・トルマリンはパライバ州以外でも発見されました。パライバ州の隣の州でも発見され、さらにアフリカのナイジェリアやモザンビークからも見つかりました。現在、ブラジルのパライバ州以外で産出する同様な色のトルマリンに対してもパライバ・トルマリンと呼称しています。ただし、銅とマンガンを含むこと、と規定されています。

銅の含有率(%) | 最小 | 平均 | 最大 |
---|---|---|---|
パライバ・トルマリン | 0.5% | 約2.0% | 5.6% |
ネオンブルーが魅力の銅含有トルマリン
変種
本体(ある石を形造っている化学組成あるいは構成している元素の割合)が同じで、いろいろな色で産出することを言います。トルマリンはいろいろな色で産出することが知られています。
鮮青色のパライバ・トルマリンも変種の一種です。この他にトルマリンは赤色、緑色、紫色、藍色、黒色などがあります。無色でも産出します。
宝石市場では赤色のトルマリンがよく知られています。市場ではルベライトという名称で流通しています。この石は少し黒色味を帯びた赤色です。
緑色のトルマリンはベルデライト、紫色はシベライト、藍色はインディゴライト、黒色はショール、無色はアクロアイトと呼ばれています。
変種はトルマリン以外でもあります。例えば、赤色のルビーと青色のブルー・サファイアも変種同士です。変種は英語表記ではバラエティといいます。
トルマリンは多くの変種を持っています。ですから、トルマリンのみで構成された色の変化に富むネックレスも売り出されています。多彩な色を持つトルマリンだからできる特長といえます。
変種の名称 | 色 |
---|---|
パライバ・トルマリン | 鮮青色 |
ルベライト | 黒味を帯びた赤色 |
ベルデライト | 緑色 |
シベライト | 紫色 |
インディゴライト | 藍色 |
ショール | 黒色 |
アクロアイト | 無色 |
多彩な色を持つトルマリンの種類
焦電気(しょうでんき)
トルマリンを100℃(度)近くまで加熱すると、一方の端に正(プラス)電気、他の端に負(マイナス)電気が発生して帯電する現象が起こります。
その結果、トルマリンは周りの小さなホコリやゴミを引き付けます。このようなトルマリンの特性から、和名(日本語表記)は電気石と呼ばれています。そして、このような現象を焦電気といいます。
トルマリンが焦電気を持っていることは古くから知られており、オランダの宝石商人達はトルマリンのことを「灰を吸い付ける石」と呼んでいました。
加熱すると帯電する特性
二色性
トルマリンをある方向から見て、次にその方向を変えて見ると、色が変わって見えます。この現象は二色性と呼ばれています。
トルマリンは多彩な色を持つことで知られています。その中で緑色や褐色のトルマリンは特に二色性が強いです。ある方向では緑色や褐色に見え、方向を変えると真っ黒になります。方向によって驚くほど色が変わります。これほど劇的に色が変わる石は他にありませんから、トルマリンであると判定できます。
赤色のトルマリンであるルベライトも二色性を示します。しかし、緑色や褐色ほど強くありません。ルベライトのルース(裸石)の方向を変えて、10倍のルーペで観察すると、濃い赤色と淡いピンク色に見えます。確かに二色性を示します。
二色性の観察はガラスとの識別に役立ちます。ガラスには二色性はありません。例えば、赤色のガラスとルベライトを識別する場合、前者では二色性がありませんから、いろいろな方向から観察しても色は変わりません。後者では二色性がありますので、方向を変えると、色が変化します。
角度により色が変わる性質
ダブリング
10倍のルーペを使って、ルースのテーブル面(中央の広い平らな面)から裏側のファセット(カット、研磨された平らな面)とファセットが接するライン(線)を観察すると、そのラインが二重に見える現象をいいます。
この現象を利用すると、ガラスとの識別に役立ちます。たとえば、ピンク・トルマリンとピンク色のガラスを識別する場合、ダブリングの有無で識別が可能です。ピンク・トルマリンではダブリングが見られます。しかし、ピンク・ガラスではダブリングが見られません。
ダブリング現象は多くの宝石で見られます。しかし、10倍のルーペでダブリングを観察できる石は限られます。トルマリンやペリドット、スフェーン、クンツァイトなどです。
このダブリング現象は石の複屈折に起因しています。複屈折とは光が二つに分かれることです。宝石に光が当たると、その光は宝石の中を透過します。そして光が透過するとき、一般にその光は二つに分かれて進みます。分かれる程度は宝石の種類によって違います。分かれる程度が大きいと、ダブリングという現象を10倍のルーペで観察することができます。
光の屈折により線が二重に見える現象
バイカラー・トルマリン
バイは二つという意味です。ですから、二つの色を同時に持っているトルマリンということになります。
トルマリンは多彩な色で産出することが知られています。その多彩な色の中のふたつの色が同時にひとつの石に現れた場合をバイカラー・トルマリンといいます。
例えば、長方形をしたルースの真中あたりで左右の色が、左では赤色、右では緑色と異なっているトルマリンがときどき市場で見られます。
さらにトルマリンの原石の断面を見ると、中心部が赤色で周囲が緑色をしたものもあります。この場合はウォーター・メロン(西瓜)と呼ばれています。
二色が同時に現れる珍しい石
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まとめ
トルマリンは、その美しい色合いとユニークな性質によって、多くの人々を魅了してきた宝石です。特に「パライバ・トルマリン」は、ネオンブルーの輝きと希少性から、世界中の宝石愛好家に高く評価されています。また、トルマリンには赤や緑、紫、黒など多彩なカラーバリエーションがあり、それぞれが異なる名前で市場に流通しています。
さらに、トルマリンの科学的な特徴も興味深いものです。加熱すると帯電する「焦電気」、角度によって色が変わる「二色性」、光が二重に屈折する「ダブリング」など、他の宝石にはない特性を持っています。これらの特性を利用することで、トルマリンとガラスを識別することも可能です。
また、一つの石の中に二つの色が共存する「バイカラー・トルマリン」は、その珍しさから特に人気があります。ウォーターメロン・トルマリンのように、まるでスイカのような色合いを持つものもあり、コレクターズアイテムとしても注目されています。
トルマリンは、単なる宝石ではなく、科学的な魅力も兼ね備えた特別な存在です。その美しさと特性を理解することで、より深く楽しむことができるでしょう。
- トルマリンは多彩な色を持つ魅力的な宝石
- パライバ・トルマリンはネオンブルーの希少な変種
- 変種にはルベライト(赤)、ベルデライト(緑)などがある
- 焦電気により、加熱すると帯電する特性がある
- 二色性によって、見る角度で色が変化する
- ダブリングにより、ルーペで見ると線が二重に見える
- バイカラー・トルマリンは、一つの石に二色が共存する珍しい宝石
- トルマリンの特徴を理解することで、その魅力をより深く楽しめる