【宝石個別解説016】ファントム・クォーツ（Phantom quartz）

１．外観特徴

クォーツの内部を肉眼で見ると、山形の線がひとつ、あるいは山形の相似形がいくつも存在していることがあります。透明なクォーツの中に山形が見られます。このような石はファントム・クォーツと呼ばれています。
ファントムとは幻影、幽霊という意味です。ですから、ファントム・クォーツは日本語で幻影水晶、幽霊水晶と呼ばれています。
クォーツの成長過程で周囲の環境が変わり、成長面に沿って不純物が混入したと考えられています。

２．美しさの理由

ファントム・クォーツの中に直線状の山形が存在していることで、不思議さ、自然の神秘性、自然の美が感じられます。
成長面に堆積した不純物の種類によって色付の山形も見られます。緑泥石やフックサイトなどの不純物が堆積すると、緑色の山形になります。ヘマタイトが堆積すると、赤色や赤褐色の山形になります。色付の山形が見られるファントム・クォーツはより美しさが増します。

３．耐久性

ファントム・クォーツの本体はクォーツです。クォーツのモース硬度は７です。耐久性はあると判断できます。ファントム状のインクルージョンが耐久性、強度に影響することはないと推測されます。

４．原石形状

ファントム・クォーツの本体はクォーツですから、原石は六角柱状です。端面は六角錐です。六角錐の断面は山形で、ファントムの形はこの山形が現れています。

５．鑑別

石の内部にファントム状の形を造ることは技術的に困難であり、模造石はありません。

６．その他

（１）化学組成：ＳｉＯ２
（２）産出国　：ブラジル、マダガスカルなど。
（３）日本名（和名）：山入水晶（やまいりすいしょう）、幻影水晶、幽霊水晶。
（４）付記：ファントムに色が付いている場合、色の名前を付けて表示されます。例えば、グリーン・ファントム・クォーツ、レッド・ファントム・クォーツなどです。