ダイヤモンドはなぜ美しいのか
ダイヤモンドを見て「美しい」と感じるのは、次の三つの現象を瞬間的にとらえて、判断しているからだ、と考えられています。
(1)ブライトネス(輝き、静的輝き)←ダイヤモンドの屈折率に依存。
(2)ファイア(虹色)←ダイヤモンドの分散に依存。
(3)シンチレーション(煌めき、動的輝き)←ダイヤモンドのカット面数、光沢に依存。
ブライトネスを生み出すのは、ダイヤモンドの高い屈折率と数学的理論に沿ったカット(プロポーション)に依存します。高屈折率とカットによって光が全反射するからです。
上から入射した光がダイヤモンドの中に入り、再び上に帰って来る現象、全反射がブライトネスを生み出します。
ファイアは宝石用語です。一般的には分散と呼ばれています。分散と言う用語の通りに光が分かれて散る現象です。小学校や中学校の理科の実験で経験がある「ガラスプリズム」による虹色現象です。ダイヤモンドはガラスプリズムのような働きがあります。
ダイヤモンドをテーブル面からのぞきますと、黄色や青色、緑色が見られます。無色透明なダイヤモンドの中に虹色が存在することで、ダイヤモンドに華やかさを添えています。
シンチレーションとは何か
今回はシンチレーションです。シンチレーションの英語での一般的な意味は「星のまたたき」です。ダイヤモンドにおいては、その石を動かす時、または見る人が動く時、さらには光源が動く時、その時々でダイヤモンドがキラリと光ります。この現象をシンチレーションと言います。
このシンチレーションを効果的に発揮させるには、ファセット(研磨された平滑面)の数、大きさ(サイズ)、角度などを考慮する必要があります。ダイヤモンドをカットして来た歴史の中で、試行錯誤しながらより最適解に近付けた結果と思われます。経験則の結果と推測されます。
ファセットの面数を増やせば良いという訳でもありません。逆に極端に面数を減らせば、明らかにシンチレーションが落ちることが想像できます。
そこで、ダイヤモンド・カッター(ダイヤモンド研磨工)の中では次の経験則が言われています。「ファセットのサイズ(寸法)は、0.5ミリから3ミリが最も輝く」と言う経験則です。
この経験則から、より大きなダイヤモンド、例えば10カラット以上のダイヤモンドでは58面よりも多くのファセットが必要といえます。逆に0.1カラット以下の小さなダイヤモンドでは、58面は必要なく、より少ない面数で良いと言えます。
実際にメレー・ダイヤモンドに58面を施した石と少ない面数を施した石を比較しますと、少ない面数を施した石がより輝いて見えます。