シャトヤンシー

キャッツ・アイを説明する文章の中に「シャトヤンシー」という用語がしばしば登場します。キャッツ・アイと同義語ですが、シャトヤンシーはフランス語から派生した用語です。フランス語で猫は「シャ」(chat)と表現されます。
猫の目のように変化するという意味はフランス語で「シャトワヤー」(chatoyant)と表現されます。この言葉が英語では「シャトヤント」と表現され、現象を意味する「シャトヤンシー」(chatoyancy)になったと推測されています。シャトヤンシーは日本語では猫目効果と呼ばれています。

光条

光条(こうじょう)の条は帯、線という意味です。ですから、光条は白く光る帯のことです。キャッツ・アイ・ストーンを上からながめると、一本の白く光る帯が見られます。右図のような縦に一本
の白い光条が見られます。

キャッツ・アイ・ストーンは常にカボッション・カットにされています。カボッションとは山形の形状です。そしてほとんどの場合、上から見るとオーバル(楕円)の形状です。それゆえ、目の形(オーバル)の中に光条が存在すると、まさに猫の目のような印象を受けます。
光条の発現はインクルージョンに原因しています。細長いインクルージョンがひとつの方向に平行に分布しているとき、インクルージョンに直角に光条が現れます。猫の目のような光条を発現させるには、カボッション・カットにされていること、という条件も必要です。

糸巻き駒と天使の輪

糸巻き駒とは糸を巻きつける筒状のものです。この糸巻き駒に機械的に正確に絹糸などが巻かれていると、この糸に直角に細長い光条が現れます。キャッツ・アイが発現する原理を説明するときに、しばしば糸巻き駒が引き合いに出されます。
糸はインクルージョンに相当します。筒状の糸巻き駒はカボッション・カットに相当します。丸みの頂点部に光条が現れます。
キャッツ・アイが発現する原理を説明するとき、他の身近な例として「天使の輪」が挙げられます。天使の輪とは、真っ直ぐに整えられた髪の毛の頭頂部に現れる白い光の輪のことです。髪の毛は細長いインクルージョンとみなすことができます。卵形をした頭頂部はカボッション・カットとみなすことができます。
キャッツ・アイが発現するには、2つの条件が必要です。ひとつは細いインクルージョンがひとつの方向に平行にたくさん分布していること。もうひとつはカボッション・カットにされていることです。
糸巻き駒の糸に見られる光条も頭頂部に見られる天使の輪も、キャッツ・アイの発現原理を考えるときに非常に手助けになります。

イミテーション・キャッツ・アイ

宝石業界でキャッツ・アイと言えば、クリソベリル・キャッツ・アイを指します。クリソベリル自体は合成が可能です。そしてクリソベリルの中にルチルのインクルージョンを析出させたクリソベリル・キャッツ・アイも合成されたことがあります。最近ではこの合成クリソベリル・キャッツ・アイを市場で見る機会はありません。
一方で外観の色も光条も天然クリソベリル・キャッツ・アイによく似たイミテーション・キャッツ・アイが市場で見られます。
素材はプラスチックです。細いファイバーをたくさん束ねて、プラスチック素材で固定したものです。ルースの場合は、手に持ったときの軽さで異常を感じ取ることができます。金属の枠に取り付けられると、軽さの情報は得られません。そこで、10倍のルーペで側面から観察することが有効です。ファイバーの一本一本が確認できます。太さが揃ったファイバーが集合して、蜂の巣のような構造に見えます。

一方向平行インクルージョン

キャッツ・アイの発現にはインクルージョンが重要な役割を果たしています。そしてキャッツ・アイの発現にはインクルージョンが一方向に平行に分布していることが必要です。インクルージョンが曲がったり、途中で切れたりすると、光条が曲がったり、光条に段差がついたりします。
一方向平行インクルージョンが重要ですが、インクルージョン自身の太さと分布密度が光条に影響を及ぼします。非常に細いインクルージョンが密集していると、鋭い明瞭な光条が現れます。

クリソベリル

宝石業界でキャッツ・アイと言えば、クリソベリル・キャッツ・アイを意味しています。キャッツ・アイの本体であるクリソベリルとはどのようなものでしょうか? 宝石の中で、クリソベリルはベリリウム(Be)元素で構成されている比較的珍しいものです。ベリリウムを含む宝石としては、他にベリル・グループ(エメラルドやアクアマリンなど)と余り知られていない数種類の石(例えば、ターフェアイト、ハンベルジャイト、フェナカイト、ユークレース)だけです。
クリソベリルの特異タイプはキャッツ・アイとアレキサンドライトですが、特異タイプでなく、普通タイプのクリソベリルもあります。一般に色相は緑黄色で、ファセット・カット(平らな研磨面を持つカット・スタイル)にされます。18世紀から19世紀にヨーロッパ(ポルトガルやイギリスなど)で多く使われました。

アレキサンドライト・キャッツ・アイ

アレキサンドライトの変色効果とキャッツ・アイの猫目効果を併せ持つ希少性の高い宝石のことです。変色効果の発現にはクロム元素が重要な役割を果たしています。クロム元素によって赤色光と青色光が絶妙なバランスを保っています。
キャッツ・アイの発現にはインクルージョンが重要な役割を果たしています。この宝石のインクルージョンは非常に細く、高い分布密度のために明瞭な光条が見られます。