多彩な色彩をもつトルマリン

トルマリンという名前は、宝石愛好家にとってパライバ・トルマリンとして広く知られています。ネオン・ブルーにたとえられる鮮やかな青色は魅力的です。このパライバ・トルマリンはブラジルのパライバ州で初めて発見されました。
トルマリンは多くの色で産出します。鮮青色、赤色、ピンク色、緑色、褐色、黒色と多彩です。トルマリンは宝石の中でも一番と言えるほど多くの色を持っています。
多彩な色を持つトルマリンは、極めて複雑な組成(トルマリンを構成する各種元素の割合)をしています。この複雑な組成が多彩な色の産出に大きく関係しています。トルマリンの組成は宝石の中で一番と言えるほど複雑です。

トルマリンの組成

トルマリンの本質を知るには、組成(化学組成)を知る必要があります。トルマリンの組成は複雑ですので、言葉で表現する場合は「複合ホウケイ酸塩」と呼ばれています。
宝石の特性を考えるとき、右図のように本質特性、固有特性、表面特性という三層で考えると便利です。
右図の本質特性の領域に成分という用語があります。これは組成と同じです。そして成分は複合ホウケイ酸塩となっています。

トルマリンの本質は複合ホウケイ酸塩といっても意味がよく判りません。そこで、トルマリンを化学式で表現することにします。複雑な化学式が予想されます。その式は(Na,Ca)(Mg,Fe)3Al6(BO3)3(Si6O18)(OH)4です。
複合ホウケイ酸塩という表現の中のホウというのは、化学式の中ほどに位置しているBのことです。Bはホウ素を意味しています。ケイというのは、化学式の後に位置しているSiのことです。Siはケイ素を意味しています。その他、化学式の中にはNaやCa、Mg、Feなどが見られます。これらをまとめて複合という表現にしています。
トルマリンの本質特性「複合ホウケイ酸塩」から、トルマリン独特の固有特性が生まれます。

両極の形がちがう「異極像」

宝石を楽しんでおられる方にとって、固有特性のひとつである「異極像」という用語は初めて聞かれることと思います。
トルマリンの原石は断面が三角形をして長く柱状に成長しています。障害物がない環境で成長したトルマリンの柱状原石は、上下で違った形をしています。上を北極、下を南極と想定して、両極の形(像)が違うことからトルマリンは異極像と呼ばれています。
トルマリンの異極像から不思議な表面特性が現れます。トルマリンは加熱されると、帯電します。帯電すると空気中のチリやホコリを吸い寄せます。ですから、店頭のガラス・ケースに飾られたトルマリンに強いスポットライトを長く当てていると、トルマリンが加熱され、周囲のチリやホコリがトルマリンに付着して、色や輝きを低下させるかもしれません。汚れはセーム革などで拭けば、簡単に除去できます。
加熱されるとトルマリンは帯電する。この特性は産出国のスリランカでは古くから知られていました。現地ではトルマリンは「トゥルマリ」と呼ばれ、灰を吸いつける石という意味でした。

光を二つに分ける「高複屈折性」

トルマリンの固有特性のひとつに高複屈折性が挙げられます。多くの宝石は、自身に光が当たると、その光を二つに分ける性質があります。宝石の中に入った光は二つに分かれて進みます。これを複屈折性といいます。分かれる程度は宝石によって違います。トルマリンは複屈折性が大きく、高複屈折性に分類されます。
トルマリンの高複屈折性からダブリングと呼ばれる表面特性が生まれます。このダブリングは鑑別(ある宝石が何であるか、本物か偽物か、天然か合成かなどを判定すること)に役立ちます。
例えば、グリーン・ガラスとグリーン・トルマリンを鑑別する場合、ダブリングを利用すると容易に識別できます。ガラスにはダブリングがありません。トルマリンは比較的明瞭なダブリングを示します。
ダブリングを観察するには、10倍のルーペが必要です。カットされたトルマリンのテーブル面(正面の広い個所)から後側のファセット(研磨された平らな面)のライン(ファセットとファセットが接する線)に10倍ルーペの焦点を合わせると、そのラインが二重に見えます。ダブリングはピンボケではありません。ダブリングは焦点をしっかり合わせても、二重に見える現象です。ダブリングは鑑別に大いに役立ちます。

向きを変えると色が変わる

トルマリンの表面特性として強二色性が挙げられます。二色性とは、石を回して方向を変えると、色が変わる現象をいいます。トルマリンはこの二色性が強く、強二色性に分類されています。例えば、カットされた比較的濃い色のグリーン・トルマリンを正面から観察すると、美しいグリーン色に見えます。ところが、このトルマリンのガードル(一番大きい個所、側面部)から長手方向(サイズが長い方向)に平行に観察すると、ほぼ真っ黒に色が変わります。驚くような色の変化が起こります。
トルマリンの他の表面特性に多変種が挙げられます。変種とは同じ組成(成分)なのに違った色の宝石が見られること、産出することをいいます。トルマリンは宝石の中で一位、二位を争うほどの多くの色が見られます。

特性が生み出す様々な色

宝石愛好家にとって、最も手に入れたいトルマリンはパライバ・トルマリンかもしれません。鮮やかな青色はネオン・ブルーにたとえられます。鮮青色の美しい宝石です。
トルマリンの複雑な組成の中に微量の銅とマンガンが入り込むと、美しいパライバ・トルマリンが生まれます。
パライバ・トルマリンの次に人気があるのは、赤色のレッド・トルマリンです。レッド・トルマリンは一般にルベライトと呼ばれています。色相は少し黒色味を帯びた赤色です。時に黒色味を帯びたルビーと間違われます。レッド・トルマリンの発色は微量に含まれるマンガンに原因しています。
トルマリンは多変種宝石です。鮮青色のパライバ・トルマリンや赤色のルベライト、その他に緑色、茶色、紫色、黒色など多彩です。トルマリンが多彩な色で産出する理由は、トルマリンの本質特性、自身が持つ複雑な組成「複合ホウケイ酸塩」に起因していると考えられます。