クリソベリルは3つのタイプに分けられます。それはキャッツ・アイとアレキサンドライトと特別な効果を示さないクリソベリルです。
キャッツ・アイとアレキサンドライトをプレシャス・クリソベリルとするなら、特別な効果を示さないクリソベリルはコモン・クリソベリルになります。

キャッツ・アイといえばクリソベリル・キャッツアイ

まず、キャッツ・アイの鑑別について、宝石業界でキャッツ・アイと言えば、クリソベリル・キャッツ・アイを意味しています。
クリソベリル以外のキャッツ・アイを示す宝石は、頭に宝石の種類を表示することが世界の宝石業界の約束事です。例えば、クォーツ(石英)がキャッツ・アイを示す場合は、クォーツ・キャッツ・アイと表示します。また、トルマリンがキャッツ・アイを示す場合は、トルマリン・キャッツ・アイと表示します。
宝石ビジネスでキャッツ・アイといえば、クリソベリル・キャッツ・アイを意味しています。このキャッツ・アイに最も似ている宝石は、クォーツ・キャッツ・アイです。

クリソベリル・キャッツアイとクォーツ・キャッツ・アイを見分ける

クリソベリル・キャッツ・アイの本体の色は、緑黄色や灰黄色、緑褐色などです。市場で高い評価を受けている色は蜂蜜黄色(ハニー・イエロー)です。
一方、クォーツ・キャッツ・アイの本体の色は、灰色、灰緑色、褐緑色などですが、希に蜂蜜黄色もあります。ですから、良質のクォーツ・キャッツ・アイに出会うと、クリソベリル・キャッツ・アイとの識別は困難です。
外観の色とあわせて、光条(白く光る光の帯)の観察も鑑別の手助けになります。クリソベリル・キャッツ・アイの光条は銀白色でシャープです。一方、クォーツ・キャッツ・アイの光条は銀白色で同じ色ですが、少し幅があり、粗い感じです。
クリソベリル・キャッツ・アイとクォーツ・キャッツ・アイの識別に関して、本体の色と光条の違いを観察する他に側面の形状に注目することも必要です。
クリソベリル・キャッツ・アイの側面形状はダブル・カボッションです。ダブル・カボッションとは上下ともカボッション(山形)のことです。
一方、クォーツ・キャッツ・アイはほとんどシングル・カボッションです。シングル・カボッションとは上部がカボッション(山形)で、下部は水平(平ら)です。
クリソベリル・キャッツ・アイとクォーツ・キャッツ・アイをより正確に科学的に識別するには、両宝石が持っている固有の特性を測定する必要があります。
鑑別に比較的よく使われる宝石の特性として比重と屈折率が挙げられます。各種の宝石は固有の比重と屈折率を持っています。
代表的な宝石であるダイヤモンドの比重と屈折率は、それぞれ3.52と2.42です。これらの数値は、どの国で産出しても、どのように研磨されても不変です。
ダイヤモンドと同じくクリソベリル・キャッツ・アイとクォーツ・キャッツ・アイの比重や屈折率の数値も不変です。ですから、少し手間がかかりますが、比重と屈折率を測定すると、確実に鑑別が可能となります。
右の表はクリソベリル・キャッツ・アイとクォーツ・キャッツ・アイの比重と屈折率の数値を示しています。

両宝石の数値(上下の数値)を比較すると、かなりの開きがあります。屈折率の差は0.20ですが、宝石用の屈折計を使用すると、0.20の開きは容易に識別できる数値である、と言えます。

比重の測定には重液(比重が1より重い液)を使用すると便利です。ただし、ルース(裸石)に限定されます。貴金属にセッティングされている場合は測定できません。
重液の例としてヨウ化メチレンが挙げられます。この重液は市販(宝石機器販売会社にて販売)されています。ヨウ化メチレンの比重は3.33です。
この重液の中にクリソベリルを入れると沈みます。クリソベリルの比重が重液よりも大きいからです。一方、クォーツを重液の中に入れると浮きます。クォーツの比重が重液よりも小さいからです。このようにしてクリソベリルとクォーツを識別できます。
ルースが貴金属にセッティングされている場合は重液法を適用できません。この場合はルースの屈折率を測定する必要があります。市販されている宝石用の屈折計を使用して屈折率を測定します。
キャッツ・アイ・ストーンはカボッション・カットですから屈折率の測定に少しスキルが要ります。しかし、クリソベリルとクォーツの屈折率はかなりの差がありますので、充分に識別可能です。
クリソベリル・キャッツ・アイについて、合成石も開発されています。天然石と合成石ではインクルージョンに違いがあります。しかし、比重や屈折率は近似した数値を示しますので要注意です。合成クリソベリル・キャッツ・アイの疑いが少しでもある場合は、鑑別の専門機関に相談することが肝要です。

アレキサンドライトと、その他クリソベリルの鑑別について

次にアレキサンドライトの鑑別について、この宝石の魅力は変色性にあります。太陽光の下では緑色、白熱光の下では紫赤色を示します。
市場では変色性を示す合成サファイアが見られます。しかし、この石は太陽光の下では灰青色、白熱光の下では赤紫色です。太陽光での色の違い(緑色と灰青色)で識別できます。
さらに合成アレキサンドライトも出回っています。この合成石は強い変色性を示すことが特長です。豆球ペンライト(白熱光)を石に当てると、明瞭な紫赤色を示します。
そして石を光にかざして、肉眼またはルーペで内部を観察すると、ほとんどインクルージョン(内包物、異物)が見られません。
キャッツ・アイやアレキサンドライトを除く緑黄色や黄色のクリソベリルが市場で見られます。外観が似ている宝石としてベリルやサファイアが挙げられます。
クリソベリルと外観が似ている他の宝石との識別は、外観だけでは難しいです。鑑別には屈折計を使用して屈折率を測定することが有効です。

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