実は6種類あるガーネット・グループ
ガーネットは1月の誕生石として広く知られています。多くの人が思い浮かべるガーネットの色は、少し暗い、少し黒色味を帯びた赤色だと思います。ガーネットの赤色は、ルビーに見られる鮮烈な赤色と異なります。
多くの人が目にするこの種類のガーネットは、アルマンディン・ガーネットと呼ばれています。地球から産出するガーネットは、このアルマンディン・ガーネットを含めて合計6種類あり、ガーネット・グループと呼ばれています。
では、このガーネット・グループの6種類に共通していることは何でしょうか? それは組成(化学組成)がX3Y2Z3というように単純に表示できるものをガーネットと称しています。このX、Y、Zは次のようなことを意味します。
アルマンディン・ガーネットを例に挙げて、X、Y、Zを説明します。XはFe(鉄)を表します。YはAl(アルミニウム)です。ZはSiO4(四酸化ケイ素)です。ですから、アルマンディン・ガーネットはFe3Al2(SiO4)3という組成になります。
アルマンディン・ガーネット以外の5種類もこのような表示ができる組成を持っています。
ガーネット・グループの6種類とは、アルマンディンの他にパイロープ、スペッサタイト、アンドラダイト、グロッシュラー、ウバロバイトです。
ガーネットの色について、身近で見られる暗赤色の他にオレンジ色や緑色もあります。
暗赤色のガーネットは比較的安価な石ですが、アンドラダイトに属する緑色の「デマントイド」と呼ばれている石は高価です。
ガーネットの特性(特徴)
次にガーネットの本質特性、固有特性、表面特性について、下の図解を参考にしながら掘り下げてみます。
固有特性は、本質特性から発生するガーネット固有の特性です。例えば屈折率や硬度などです。屈折率が大きいと、輝きが増します。硬度がより高いと耐久性が増し、傷がつきにくくなります。宝石の価値はより増します。
図解の固有特性の個所を見ると、中程度屈折率、中程度硬度と記載されています。もっと詳しくガーネットの屈折率を調べると、その数値は1.73から1.87に分布しています。硬度は6.5から7.5に分布しています。
屈折率について、ダイヤモンドと比較すると、ダイヤモンドの屈折率は2.42です。かなりの違いがあります。ルビーの屈折率は1.76から1.77です。ガーネットの種類によってルビーの屈折率を下回る場合もあり、上回る場合もあります。
輝きという点では、ルビーに似ています。しかしダイヤモンドには及びません。
硬度について、宝石業界では硬度を表示する場合はモース硬度を使います。モース硬度は硬度1から硬度10まであります。もっとも軟らかい硬度が1です。もっとも硬い硬度が10です。ダイヤモンドは硬度10です。ガーネットの硬度は種類によって違いがあり、硬度6.5から7.5まで幅があります。ルビーの硬度は9です。
ガーネットの硬度は、ダイヤモンドよりもはるかに軟らかく、ルビーと比べても軟らかいと言えます。しかし、硬度が6.5から7.5の数値であれば、石として宝石として日常で使用することに問題はありません。
ガーネット固有の「単屈折性」と「固溶体」
さらにガーネットの固有特性として、図解の中に単屈折性と固溶体という用語が見られます。単屈折性とは、ガーネットはひとつの屈折率を持っているという意味です。多くの石、宝石は複数(二つまたは三つ)の屈折率を持っています。
固溶体の固溶とは、似たような組成を持つもの同士がお互いに溶け合ってひとつになることです。溶け合ってできたものを固溶体といいます。例えば、アルマンディン・ガーネットとパイロープ・ガーネットはお互いに溶け合い、ロードライト・ガーネットを造り出します。
手にしやすさが魅力の宝石
次に表面特性に移ります。図解には非多色性、中程度光輝、中程度発色性が挙げられています。非多色性とは、ガーネットの方向変えて色を観察しても、その色が変わらない、という意味です。多くの石、宝石は方向を変えて観察すると、色が変わって見えます。
例えば、ルビーの方向を変えると、ある方向で紫赤色、ある方向で橙赤色に変わります。ところが、ガーネットでは方向によって色は変わりません。
また表面特性には中程度光輝と記載しています。ガーネットはダイヤモンドのように輝くことはなく、しかし水晶よりも輝きます、という意味です。ガーネットを宝石の視点で見れば、普通の輝きを持つ普通の石です。
さらに表面特性には中程度発色性と記載されています。ガーネットの色の種類は、赤色の他にオレンジ色や緑色もあります。しかし、トルマリンほど多彩ではありません。色の数に関してガーネットは普通です。
赤色や緑色のガーネットについて、色の美しさを見ると、赤色のルビーや緑色のエメラルドのような鮮やかさはありません。色自体も普通です。
ガーネットは比較的産出量も多く手頃な価格であることから、身近な石、宝石としてその名前が知られています。多くの人に最もよく知られた石、宝石のひとつです。ガーネットを宝石として眺めた場合、際立った優れた特長はありませんが、際立った短所もありません。アクセサリー商品から宝飾品まで幅広く展開できる大衆向きの石、宝石といえるかもしれません。
ガーネット・グループの中で異色な石があります。それは緑色のデマントイド・ガーネットです。特にロシア産のその石の中には、「ホース・テール」と呼ばれているインクルージョン(内包物、異物)が見られます。馬の尻尾のようなインクルージョンです。
このデマントイド・ガーネットは、ガーネット・グループの中で群を抜いて高価です。
大衆向きと思われているガーネットの中にも、異彩を放つガーネットがあることも少しずつ知られて来ました。