ムーンストーンとは、カボッション・カット(山形状カット)されたとき、月の光のような柔らかい一本の光条(こうじょう、光の帯)が見られる長石のことです。
ムーンストーンは、日本語表記では「月長石」(げっちょうせき)と呼ばれています。月の後に長石の文字が付いています。ですから、この石は長石グループに属します。
長石はシリカ(石英、水晶など)と共に地殻(大地)を構成する重要な鉱物です。
ムーンストーンには、なぜ一本の光条が見られるのでしょうか? 次のように考えられています。長石の薄い層が何千層も積層されて、光が干渉現象を起こしているからと推測されています。干渉現象とは、シャボン玉のように薄い水の膜と空気が接すると、虹色が生じることです。
薄い膜が違うものと接する(薄い水が空気と接する)と干渉を起こし、虹色が発生します。しかし、薄い膜が少し厚くなると、虹色ではなくて白色になります。
ムーンストーンの断面を顕微鏡で観察すると、薄いカリウム長石と薄いナトリウム長石が交互に重なり合っている構造をしています。ムーンストーンはカリウム長石(正長石)とナトリウム長石(曹長石)でつくられています。両者は少しだけ組成が違います。
 参考:カリウム長石→KAlSi3O8  ナトリウム長石→NaAlSi3O8
地球内部の高温領域では、カリウム長石もナトリウム長石も混じり合って溶けています。

地表近くに出て来て、ゆっくりと温度が下がると、カリウム長石とナトリウム長石はお互いに分離して、結晶化します。交互に重なり合って積層します。

カリウム長石とナトリウム長石の層がシャボン玉の水のように薄いと、虹色になるはずですが、少し厚いためにムーンストーンは白色になってしまう、と推測されます。青色を示すブルー・ムーンストーンは層が薄いと思われます。オレンジ色のムーンストーンは他の不純物(鉄など)に原因していると考えられます。
ムーンストーンの主要な産出国は、インド、スリランカ、マダガスカル、ミャンマーなどです。
ムーンストーンは、1930年~1940年に世界的に流行、人気のある時期がありました。
ムーンストーンの原石を平らな面にカット(切断、研磨)すると、白い光、銀白色を示すだけの平凡な石になります。カボッション・カットにすると、初めて一本の光条(光の帯)が現れます。柔らかい月の光を放つ珍しい石に変わります。柔らかい月の光の奥には、何千層もの薄い層が積み重なっている秘密があります。

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