１．外観特徴
緑色のエメラルドの本体に、スター・ルビーに見られるような６本の線が現れることが特長です。トラピチェ・エメラルドに現れる６本の線は、スター効果で見られる線とは異なります。発現の仕方が異なります。トラピチェはトラピッチ、トラピッチェと表示されることもあります。
トラピチェ・エメラルドは６方向に配列した肉眼で見えるインクルージョンで、その直線状のインクルージョンは比較的幅が広いです。また、そのインクルージョンは全面に分布しているわけではありません。
スター・ルビーなどはインクルージョンが全面に分布し、カボッション・カットしてスターが発現します。トラピチェ・エメラルドは強いてカボッション・カットにする必要はありません。
トラピチェとはスペイン語で砂糖キビやオリーブを搾（しぼ）る機械のことで、この機械の歯車の内側には６本の支え軸があります。６方向に配列したインクルージョンを持つエメラルドは、トラピチェの歯車に似ていることから、トラピチェ・エメラルドと名付けられました。
２．美しさの理由
トラピチェ・エメラルドには幾何学的な美しさがあります。例えば、緑色の本体に放射線状に６本の黒い幅広の線（鉱物：黒雲母）が分布している場合、緑色と黒色の配色、そして中央から伸びる６本の黒い線による幾何学模様は美しさを備えています。
しかし、トラピチェ・エメラルドの場合、美しさを越えて希少性に価値があると思われます。
３．耐久性
６方向に比較的大きなインクルージョンが存在しますが、通常のエメラルドとトラピチェ・エメラルドの耐久性は同等と推測されます。
４．原石形状
エメラルドの原石は六角柱状です。ですから、断面は六角形です。この六角形の面の中央（中心）から６方向にインクルージョンが分布しています。
５．鑑別
トラピチェを示す宝石は、エメラルドの他にルビーやサファイアもあります。本体の色とトラピチェ模様（６本の放射線）で判定します。
６．その他
（１）化学組成：Ｂｅ３Ａｌ２（ＳｉＯ３）６（本体）。
（２）産出国 ：コロンビア、ブラジル、マダガスカルなど。
（３）日本名（和名）：トラピチェ緑柱石。