タンザナイトとブルー・サファイアを見極める

タンザニアでタンザナイトが発見された当初は、その外観の色がブルー・サファイアに似ていることで注目されました。ですから、先ずはタンザナイトとブルー・サファイアとの鑑別をどのようにして行うか、ということが課題となります。
流通しているほとんどのタンザナイトは加熱処理されています。この加熱処理されたタンザナイトは強い二色性を示します。二色性とは、ある石の方向を変えて観察すると、色が変わる現象で、合計2色が見られることです。
タンザナイトは青色と紫色の二色性を示します。一方、ブルー・サファイアは青色と緑青色または黄青色の二色性を示します。ですから、紫色が見られたら、タンザナイトと判定できます。
宝石専門店や百貨店の宝石コーナーのショーケースに飾られているタンザナイトは、静止状態です。動いていないリング(指輪)などは正面のテーブル面だけしか見ることができません。この状態では二色性を観察することは難しいです。
ですから、ショーケースの中に飾られている青色の石は、タンザナイトかブルー・サファイアか、判定は困難です。

最近では、タンザナイトが持っている色の特有な性質を前面に出す傾向にあります。タンザナイト特有の色とは、鮮やかな青色の中にチラチラと紫色が見え隠れすることです。
ブルー・サファイアに似せることよりもタンザナイトの特性を活かそうとする考えです。カッター(研磨工)は、テーブル面に青色だけでなく、チラチラと紫色が見られるように原石のカット(切断、研磨)方向を入念に定めます。
ですから、最近のタンザナイトでは、テーブル面に青色だけでなく、わずかに紫色が見られる傾向にあります。このようなタンザナイトにおいては、静止状態でもテーブル面を詳しく観察すると、紫色の存在に気付くかもしれません。紫色の存在でこの石はタンザナイトである、と判定してもほぼ間違いありません。

現在、市場には二つのタイプのタンザナイトが流通しています。テーブル面に現れる色について、青色のみが見られるタイプと青色を主体として紫色がチラチラ見られるタイプの二つです。前者タイプの鑑別は、石を回して、青色と紫色が現れるかどうかで判定します。後者のタイプの鑑別は、テーブル面だけの観察でタンザナイトと推測できますが、確実な判定には、やはり石を回して、青色と紫色の存在を確かめることが必要です。

タンザナイトとブルー・サファイアを鑑別する他の方法は、ペンライトを石に当てることです。ペンライトを照射されたタンザナイトは、複数のファセット(平らな研磨面)が少し紫色味を帯びます。全体が劇的に紫色になるわけではありません。一部のファセットが紫色味に変わります。次にペンライトを照射されたブルー・サファイアは、元の状態の色と変化はありません。ペンライトを照射すると、紫色がより現れるか、青色の状態で変化がないか、ということを確認する方法です。手軽に確認、判定できる簡単な方法です。
ここで、使用するペンライトの種類に気をつける必要があります。今、市販されているペンライトの主流はLEDです。このLEDペンライトの光は青色味が優勢です。このペンライトをタンザナイトに照射しても、紫色が現れません。ブルー・サファイアの色は変化しません。ですから、LEDペンライトを使うと、両石を識別できません。
以前のペンライトは豆球を使用していました。今でも豆球のペンライトは販売されています。豆球の光は赤色が優勢です。豆球ペンライトをタンザナイトに照射すると、強い青色のタンザナイトのファセットの一部が紫色味を帯びます。ブルー・サファイアに豆球ペンライトを照射しても青色に変化は生じません。

タンザナイトと合成石バイオレット・サファイアを見極める

タンザナイトの鑑別対象になる宝石として、先ずブルー・サファイアが挙がられます。次に合成バイオレット・サファイアが課題となります。青色味を帯びた紫色の合成サファイアが市場に流通しています。
合成バイオレット・サファイアは、合成ルビーや合成ブルー・サファイアを製造するメーカーにとっては容易に造れる種類の合成石です。この合成石は強い二色性を示します。
青色と紫色の二色性です。ですから、安易に観察すると、タンザナイトと間違うかもしれません。
次に豆球ペンライトをこの合成石に照射すると、強烈な赤紫色に変化します。石全体が赤紫色にかわります。このような大きな変化起こりますので、この石は合成バイオレット・サファイアと判定できます。
さらにタンザナイトと合成バイオレット・サファイアの鑑別は、10倍のルーペが有効です。この合成石はベルヌーイ法で製造されており、石の内部に特別な痕跡が見られます。その痕跡はカーブ・ラインと呼ばれています。

カーブ・ラインは、写真で見えにくいので、右図のように描画で示しています。本体の色は青色で中央部に黒い数本の曲線が描かれています。この曲線がカーブ・ラインです。カーブ・ラインは、本体の色に関係なく、バイオレット(紫色)、ブルー(青色)、レッド(赤色)のいずれでも見られます。ただし、本体が黄色の場合はカーブ・ラインを見つけることが難しいです。
このカーブ・ラインは、外観を眺める程度では検知できません。肉眼でかなり探しても、ほぼ見つけることはできません。
やはり10倍のルーペが必要です。このルーペを使って、いろいろな方向から観察すると、カーブ・ラインを見つけることができます。

カーブ・ラインの存在は、合成石であると断定できる決定的証拠となります。天然宝石であるタンザナイトには、カーブ・ラインは存在しません。
現在、タンザナイトの合成石は造られていません。合成石とは、天然石と同じ組成を持つが、人の手で造られた石をいいます。タンザナイトの埋蔵量が枯渇して来ると、合成石が造られるかもしれません。今は、タンザナイトの合成石はありません。

タンザナイトの模造石としてブルー・ガラスが流通しています。このガラスの鑑別は比較的容易です。ガラスには二色性がありません。ですから、ガラスの方向を変えて観察しても、色の変化はありません。一色が見られるのみです。
10倍のルーペを使って、ガラスの内部を観察すると、しばしば泡や脈理が見られます。泡はほとんど球状ですが、楕円形もあります。脈理とは、水の中に蜂蜜を少し入れて、かき混ぜるとモヤモヤ感が生じます。このようなモヤモヤ感と同様な状態がガラスでも見られます。ブルー・ガラスに豆球ペンライトを照射しても色の変化はありません。

タンザナイトは鮮やかな青色の中にチラチラと紫色が見え隠れするところに特長があります。そして、方向を変えて観察すると、青色と紫色の二色が見られます。タンザナイトと外観が似ている他の天然宝石、合成石、模造石を鑑別する場合、タンザナイトの二色性、青色と紫色の存在が基本になります。