ブルー・トパーズは、ひと目で心を奪われるような鮮やかな青が特徴の人気宝石。その中でも「スイス・ブルー」や「ロンドン・ブルー」と呼ばれる色味の違いに注目が集まっています。でも、名前だけでは違いがわかりにくい…そんな方も多いのではないでしょうか?
本記事では、この2種類のブルー・トパーズの特徴や見分け方、さらには放射線による色の改変方法や、実際に流通しているバリエーションまで、専門的な情報をわかりやすく解説しています。また、トパーズが持つ「劈開(へきかい)」という割れやすい性質と、その対策についても紹介。
青の美しさに隠れた背景を知ることで、ジュエリー選びがもっと楽しく、価値あるものになるはずです。
- スイス・ブルーとロンドン・ブルーの違い
- 色の由来と放射線処理の詳細
- トパーズの種類ごとの人気傾向と価格差
- トパーズに見られる「劈開」の性質とその意味
スイス・ブルーとロンドン・ブルー
ブルー・トパーズは、今、宝石市場でもっとも目にする宝石のひとつです。存在感のある青色と比較的手頃な価格で人気があります。
宝石店の店頭、通販カタログ、そしてネット販売の画面には、ブルー・トパーズの濃い青色に対して、「スイス・ブルー」や「ロンドン・ブルー」の表示がされています。
スイスやロンドンはそれぞれ国名であり、都市名で広く知られています。しかし、スイス・ブルーやロンドン・ブルーの色の名前は、一般の多くの人に知られているわけではありません。
スイス・ブルーとロンドン・ブルーの色の名前は、元々、ある化粧品メーカーのアイシャドーに使われていたものです。現在でも世界のいろいろな化粧品メーカーのアイシャドー・パレットにスイス・ブルーやロンドン・ブルーの色に近いアイシャドーを見い出すことができます。
写真はアイシャドー・パレットの一例です。
右の写真の1Aがスイス・ブルーに近い色で、2Bはロンドン・ブルーに近い色です。

トパーズにおけるスイス・ブルーの色は、透明で明るい濃い青色です。ロンドン・ブルーの色は、透明で紺色味を帯びた濃い青色です。
スイス・ブルーとロンドン・ブルーについて、実際にカットされたトパーズの現物の色は右の写真の通りです。左側がスイス・ブルー・トパーズで、右側がロンドン・ブルー・トパーズです。


いずれの色も存在感があり、魅力的です。スイス・ブルーの色はヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界で広く人気があります。ロンドン・ブルーの色はヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなどに限られて購入される傾向にあります。日本ではスイス・ブルーがより人気があります。スイス・ブルーとロンドン・ブルーの価格について、ロンドン・ブルーがより高額に設定されています。これは製造原価に影響されています。
天然産のブルー・トパーズはわずかです。そしてその色は淡く薄く、魅力的ではありません。今、流通しているような濃い青色のトパーズは、天然には産出しません。
すべての濃い青色のトパーズは、天然産のカラーレス(無色透明)・トパーズに放射線を照射した後に加熱処理されたものです。
1970年代の初め、カラーレス・トパーズに放射線を照射し加熱すると、ブルー(青色)に改変することが判りました。以後、研究、開発の努力によって、現在の市場で見られるようなスイス・ブルー・トパーズとロンドン・ブルー・トパーズが得られるようになりました。
放射線の種類(例えば、電子線、中性子線、γ線など)、放射線の強度、照射時間そして加熱温度、加熱時間を経験則に従ってコントロール(制御)すると、目的の色(スイス・ブルーまたはロンドン・ブルー)が得られます。
しかし、現在でも歩留(収率、処理個数と良品個数の割合)は約30%前後と言われています。処理後の多くのトパーズは濁った青色や茶色味を帯びた青色となり、市場では受け入れられません。
スイス・ブルー・トパーズもロンドン・ブルー・トパーズも処理前は、同じカラーレス・トパーズです。改変する条件の違いによって、得られる色が変わります。
ロンドン・ブルーの色を得るには、より高額な装置、より長時間が必要です。その結果、ロンドン・ブルー・トパーズはより高い価格になります。
現在、流通しているブルー・トパーズの色は一般に3種類に分けられています。次の通りです。
(1)スカイ・ブルー :明るい空の青色。
(2)スイス・ブルー :明るい濃い青色。
(3)ロンドン・ブルー:紺色味を帯びた濃い青色。
市場ではさらにライト・ブルーやエレクトリック・ブルー(ネオン・ブルー、スーパー・ブルー)などの表記も見られます。ライト・ブルーは、スカイ・ブルーよりも淡い、薄い青色です。
エレクトリック・ブルーは、スイス・ブルーよりも明るく濃い青色を指します。別名でネオン・ブルーやスーパー・ブルーという名称も使われています。
時々、放射線という言葉に疑念や抵抗を感じる人もおられます。この件に関しては、放射線を照射されたブルー・トパーズは「安全である」ことがすでに確かめられています。
放射線を照射されたブルー・トパーズを1年間にわたって身体に付けたとき、身体が受ける放射線量は私達が自然から年間に受けるその量よりも少ないことが確認されています。ブルー・トパーズは安心して身体に装着できます。
比較項目 | スイス・ブルー・トパーズ | ロンドン・ブルー・トパーズ |
---|---|---|
色の特徴 | 明るい濃い青色(透明) | 紺色味を帯びた濃い青色(透明) |
人気のある地域 | 日本、ヨーロッパ、アメリカ、アジア | ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア |
製造コスト | やや低い | 高額な装置・長時間処理が必要 |
市場価格 | ロンドン・ブルーより安価 | スイス・ブルーより高価 |
色の生成方法 | 放射線+加熱(処理条件により色が決定) | 放射線+加熱(処理条件により色が決定) |
安全性 | 年間着用でも自然放射線以下で安全 | 年間着用でも自然放射線以下で安全 |
人工処理により得られる、濃淡異なる青の宝石
劈開(へきかい)
トパーズが強い劈開という性質を持っていることは、宝石学者や鉱物学者によく知られています。
右の写真はカラーレス(無色透明)・トパーズの原石です。写真の左下には破断面(割れた断面)が見られます。比較的滑らかな面です。
トパーズの破断面は、クォーツ(石英)などと異なり、滑らかな面で破損します。トパーズの原石が伸長方向(長く伸びている方向)に対して、直角方向から一定の力を加えられると、トパーズは破損しやすい性質があります。この性質は劈開と呼ばれています。

ですから、カット(切断、研磨)されたトパーズのテーブル面は、トパーズ原石の伸長方向に平行にならないように少し傾けられています。トパーズのルース(裸石)は容易に破損しないように工夫されています。
項目 | 内容 |
---|---|
劈開の定義 | 特定の方向から力を加えると滑らかに割れる性質 |
トパーズの割れやすさ | 原石の伸長方向に直角から力を受けると破損しやすい |
破断面の特徴 | 比較的滑らかな面で割れる(石英とは異なる) |
加工時の工夫 | テーブル面を伸長方向に対して少し傾けてカット |
加工目的 | 劈開による破損リスクを減らすため |
学術的な認知 | 宝石学者や鉱物学者の間では広く知られている |
トパーズ特有の割れやすさに加工で対応
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まとめ
ブルー・トパーズは、人工的な放射線処理によって美しい青色を生み出された宝石であり、その中でもスイス・ブルーとロンドン・ブルーは特に人気の高いカラーです。スイス・ブルーは明るく鮮やかな濃い青、ロンドン・ブルーは深みのある紺色系で、放射線の種類や処理方法により色が決定されます。
このようなカラーは自然界ではほとんど存在せず、すべては高い技術による産物です。安全性についても確保されており、日常的に身に着けても問題はありません。また、トパーズには「劈開(へきかい)」という特有の割れやすさがあるため、加工には繊細な工夫が施されています。
見た目の美しさの裏にあるこうした科学的・構造的背景を知ることで、ブルー・トパーズをより深く理解し、選ぶ楽しさが一層広がることでしょう。
- スイス・ブルーは明るく鮮やかな濃青、ロンドン・ブルーは紺色系の深い青
- 両者は放射線照射と加熱処理で生まれた人工的カラー
- ロンドン・ブルーはより高価で、加工コストが高いため
- トパーズには「劈開」があり、割れやすさに配慮して加工されている
- 安全性も確立されており、安心して身に着けられる