キャッツ・アイ

キャッツ・アイと言えば、宝石業界ではクリソベリ・キャッツ・アイを指します。キャッツ・アイを示す宝石は何種類もあります。例えばクォーツ、ネフライト、トルマリン、アパタイト、スカポライトなどです。これらの宝石がキャッツ・アイを持つ場合は、
頭に宝石の種類を示し、続いてキャッツ・アイをつけることが国際的な約束事です。
ですから、クォーツの場合はクォーツ・キャッツ・アイと表示されます。頭に何も付いてなく、キャッツ・アイと表示されている場合は、クリソベリル・キャッツ・アイのことです。

アレキサンドライト

変色性を持つクリソベリルはアレキサンドライトと呼ばれています。変色性とは光源を変えると、本体の色が変わる現象のことです。例えば、太陽光の下でクリソベリルを観察すると緑色に見えます。次に光源を変えて、白熱電灯(豆球ペンライトなど)の下で観察すると、紫赤色に見えます。
変色性を発現させる原因はクリソベリルに不純物として混入したクロム元素です。クリソベリルの中にクロム元素が混入すると、赤色系の光と青色系の光がバランス良く透過する状態になります。
この状態のクリソベリルに太陽光が当たると、緑色に発色します。太陽光は青色系が優勢な光です。ですから青色が優位となり、結果として緑色になります。
逆に豆球ペンライトを当てると、紫赤色に発色します。このペンライトは赤色が優勢な光です。ですから、赤色が優位となり、結果として紫赤色になります。
このようにクリソベリルがクロム元素を含むと、変色性を示すようになり、アレキサンドライトに変身します。

コモン・クリソベリル

クリソベリルには3種類のタイプがあります。キャッツ・アイとアレキサンドライトをプレシャス・クリソベリルとするなら、第3番目のタイプがコモン・クリソベリルです。このタイプは目立たないですが、宝石としての条件を所有しています。
宝石の三条件は美しさと希少性と硬さです。淡黄色や淡緑黄色のコモン・クリソベリルは18世紀から19世紀にかけてヨーロッパで多用されました。確かに際立つ美しさはありませんが、優しい落ち着いた色です。
コモン・クリソベリルの希少性について、キャッツ・アイやアレキサンドライトと比較するとかなり落ちます。しかし、コモン・クリソベリルは他の身近な宝石(シトリン、イエロー・ベリルなど)と比較しても同等レベルと思われます。
硬さについて、クリソベリルのモース硬度は8.5です。ルビーの次に硬い宝石ですから耐久性は充分です。日常の使用で容易にスリ傷が発生することはありません。
今後、コモン・クリソベリルは徐々に宝石愛好家に知られ、少しずつ市場に広がって行くと思います。

光条(こうじょう)

白く光る光の帯のことを言います。キャッツ・アイ・ストーンやスター・ストーンに現れる白い帯のことです。
光条が現れるには、二つの条件が必要です。ひとつは細い針状のインクルージョン(内包物、異物)が平行にたくさん分布していることです。もうひとつはカボッション(山形)・カットされていることです。
光条は身近なところで見ることができます。糸巻き駒です。円筒に規則正しく巻き付けられた絹糸に光が当たると、1本の光条が現れます。

右の写真は糸巻き駒に見られる光条を示しています。水平に巻き付けられている糸は宝石のインクルージョンに相当します。丸い円筒は宝石のカボッション・カットに相当します。
光条の現れ度合い(強さ、幅)はインクルージョンの太さ、分布密度、カボッション・カットの山の形状、光源(数、光量)に影響されます。光源について、天井に多数取り付けられている蛍光灯では光条は明確に現れません。ひとつの光源といえるペンライトを当てると、はっきりと光条が現れます。

三連双晶

アレキサンドライトの原石は不思議な形状で産出します。右下図はアレキサンドライトの外観形状を示しています。六つの結晶が連結したような状態になっています。外観が六角形であることから疑似六角晶とも呼ばれています。詳しくは、三つの双晶が120度の角度で背中合わせに結合しており、三連双晶、三連晶と呼ばれています。
双晶とは、同じ種類の結晶が異なる方向で2つ以上結合していることです。

1930年、ロシアで最初に発見されたアレキサンドライトの原石はすべて三連双晶であった、と言われています。一方、ブラジルで発見されているアレキサンドライトは、背中合わせに結合しているが、鳥の羽のように2方向に伸びた形状です。アレキサンドライトの結晶が成長するときの環境(温度、圧力、時間、濃度)の違いで、原石の形状が変化するものと思われます。

LEDペンライト

市販されているペンライトはほとんどLED光源です。豆球(白熱)光源のペンライトは希に見かける程度です。アレキサンドライトの変色性を確かめるときは、豆球ペンライトが必須です。顧客に変色性を見て貰うとき、LED光源では変色性が弱くなり、訴求力が落ちます。LED光源のペンライトは確かに電池の消費が圧倒的に少なく、豆球のようにフィラメントが切れる心配はありません。
通常の使用ではLEDペンライトで充分です。しかし、変色性の確認には豆球ペンライトが欠かせません。

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