青く輝く石が「タンザナイト」と呼ばれるに至るまで

1967年、タンザニアのアルーシャ(Arusha)州で趣味の鉱物探しをしていたマニュエル・スーザ(Manuel Souza、インド系移民、洋服仕立人)は青色の原石を発見しました。当初、この石をブルー・サファイアと思っていましたが、ナイロビに住んでいた知り合いの宝石商・ジョン・ソール博士に調べてもらいました。
博士はこの石の不思議さに気付き、ハイデルブルグ大学(ドイツ)やGIA(米国宝石学協会)に鑑別を依頼しました。その後、この石は新種の「ブルー・ゾイサイト」であることが判明しました。

この情報を知ったティファニー社は素早く動きました。
ティファニー社としてこの新種の宝石を大々的に売り出すことにしました。ブルー・ゾイサイトの名称では、好ましくない(悪いイメージ)ので、「タンザナイト」と名付けました。産出国のTanzania+石を意味するラテン語iteを結びつけてタンザナイトとしました。この石はタンザニアの夜の色と言われています。
そして1968年、ティファニー社の社長・ヘンリー・B・プラット・ティファニー(創始者の孫の孫、玄孫)は青色の新宝石を「タンザナイト」として公表しました。

ブルー・サファイアとは違う多色性の神秘

販売当初から長い間、タンザナイトの色は、ブルー・サファイアに似ていることが良いとされてきました。しかし、最近では違ってきました。タンザナイトだけが持つ特性が重要視されるようになってきました。今、この石は希少性と美しさで人気があります。
タンザナイトは特有の色相(色)を示します。青色の中にチラチラと紫色が見られます。
色の濃さについては、やはり濃い目が美しいです。テレビ・ショッピングでは比較的薄い色のタンザナイトが多く見られます。
タンザナイトは青色と紫色を示します。この現象は「多色性」と呼ばれています。正確に方向を定めて観察すると、タンザナイトの原石(黄褐色)では合計三色見られます。これを三色性と言います。濃青色と赤紫色、黄緑色です。流通している加熱されたタンザナイトでは青色と紫青色の二色が見られます。
タンザナイトの美しい青色は加熱処理して得られます。原石の多くは褐色です。その他に暗いピンク色、暗い緑色です。これらの原石を石膏粉末と共にルツボ(円筒形)に入れて、電気炉で約550度まで加熱、保持します。加熱は常温からゆっくりと2時間かけます。冷却は電源を切って、1日かけて室温まで冷やします。
すべての原石が美しいタンザナイトに変化する訳ではありません。宝石質のタンザナイトの収率は不明ですが、深い青色のタンザナイトが得られる確率は1%程度と言われています。
タンザナイトはタンザニアのメレラニ鉱山でしか産出しません。5億8500万年前の地層で、高温度の熱水と岩石、鉱物の接触で生成したものと推測されています。

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