市場で見られる本真珠のほぼすべてが養殖真珠です。この養殖真珠の中のアコヤ養殖真珠について、稚貝(ちがい、幼い貝)から真珠が得られるまでの工程(過程)をながめてみます。生産と言っても、基本的には生物の貝に影響され、すべてが人工的にコントロール(制御)できるわけではありません。

母貝育成

アコヤ貝の親貝は、1回の産卵で10万個~20万個の稚貝を生みます。
このとき、杉の葉を海の中におろして、稚貝を採取します。(7月~8月)
9月頃から稚貝を細かい目の金網で造られたカゴ(籠)に移して成長させます。タンクの中で人工的に授精させて稚貝を採取する方法もあります。2年~3年で母貝(真珠を造る貝)に成長します。

核入れ

養殖真珠を生産する工程の中で、最も重要な場面です。形状が整った丸い真珠を得るには、球状の核を入れる必要があります。4月~6月頃、核入れ作業を行います。このとき、核と共にピース(細胞切片)を入れることが必須です。このピースを入れないと真珠は生まれません。ピースは他の貝から切り出した2ミリ角程度の貝の肉片です。その後、母貝を穏やかな海の深い所で1ヶ月間ほど休養させます。(養生期間)

成長管理

その後、カゴの中に入れられた母貝を筏(いかだ)に吊るして、沖のプランクトンが豊富な場所に移します。海面から1m~5mの位置に吊るします。アコヤ貝の生活適温は13度~24度です。海水温度が10度以下になると死滅します。真珠層を成長させるこの期間、母貝に付着するフジツボや海藻などを掃除する作業が必要です。

浜揚げ

浜揚げは真珠の取り出しのことです。浜揚げの冬の時期(12月~1月)は、真珠層の成分であるアラゴナイト(炭酸カルシウム)が薄く伸びて、真珠の輝きを向上させる「化粧巻」のときです。稚貝の採取から真珠を浜揚げ(取り出し)するまで、約4年~5年の歳月が必要です。

補注1:アコヤ養殖真珠の三大産地は、愛媛県、長崎県、三重県です。
補注2:アコヤ養殖真珠の収率は、約30%です。母貝に核を入れるときを100%(100個)としますと、浜揚げ時には約50%(50個)です。50%の母貝は死んでしまいます。さらに商品になるのは約30%(30個)です。20%は不良品となり破棄されます。
補注3:真珠を造るには核とピースが必須です。ピースは真珠袋(ぶくろ)を造り、この真珠袋の中で真珠が成長します。核を持つ真珠を有核真珠といいます。

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